千手學園少年探偵團



評価:★★★★

 大正時代の東京。大物政治家の妾の子として生まれた永人は、嫡男の失踪により跡継ぎに繰り上がり、名門私立千手學園に編入することになった。
 折しも学内では怪しい呪いの噂が蔓延っていて、永人は友人たちとその謎の解明に関わっていく・・・

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 大正時代の東京府。主人公の永人(ながと)は大蔵大臣・檜垣一郎太(ひがき・いちろうた)の妾の子として生まれた。しかし一郎太の嫡男・蒼太郎(そうたろう)が謎の失踪を遂げてしまう。そこで一朗太は永人を檜垣家の籍に入れ、蒼太郎に代わって名門私立千手(せんじゅ)學園に編入学させることになった。


第一話「生霊少年」

 學園の門をくぐった永人が遭遇したのは驚きの連続。生徒会長の東堂広哉(とうどう・ひろや)の父は陸軍大臣、同級生の来碕慧/昊(きさき・けい/こう)の双子は大病院の息子。他にも経済界の重鎮や華族の子弟ばかり。さながら学園内は日本の上流階級の縮図のような顔ぶれだったのだ。
 入学したその日から寄宿舎で暮らすことになった永人だが、あるはずの自分の部屋が見つからない・・・

第二話「血を吐くピアノ」

 音楽室にあるピアノが、真夜中に鳴るという噂が立つ。それは英国から運んできたもので、持ち主だった少女がピアノの演奏中に亡くなったらしいという曰く付きのモノ。その証拠に、鍵盤が赤く染まっているのを見た生徒がいるという・・・

第三話「千手歌留多」

 寄宿舎の寮長を務めていた学生が退校してしまい、新しい寮長を決めることに。その裏には、學園内で行われている ”違法行為” があるらしい。二人が立候補し、東堂は新寮長を「千手歌留多」で決めると宣言するが・・・

第四話「恋の呪い 懲罰小屋」

 学園内で盗難事件が頻発する。調査を始めた永人は、學園の敷地内にある小屋に気づく。そこは ”懲罰小屋” と呼ばれ、風紀を乱したり校則違反をした生徒が入れられていた。かつてその中で生徒が自殺したことがあるという ”呪い” の噂もあった。
 そして、永人の兄・蒼太郎の失踪もここで起こった。この小屋に入れられ、そこから姿を消したのだという。わずか数分の間に、しかも鍵のかかった小屋から・・・


 背景の年代から、千手學園は旧制中学校に相当すると思われる。5年制で生徒の年齢は13~17歳。永人は3年生なので15歳、最上級生の東堂が17歳だろう。
 基本路線は大正時代を舞台にしたライトな学園ミステリなのだが、当然ながら時代が違えば生徒の気質も異なるし、「家」の比重も比べものにならないくらい大きい。家の格で學園内でのヒエラルキーが決まってしまうのも時代ゆえか。

 そんな中に飛び込んだ永人はバリバリの庶民育ちで、いわゆるバンカラだ。しかも彼の暮らしてきた下町は、胡散臭い大人たちが掃いて捨てるほどいる。そんな環境で育ってきた永人は良家の坊ちゃんたちとは ”素養” が違う。そのあたりのギャップも面白い。

 登場人物のキャラも立っている。病弱な慧と攻撃的な昊と、双子の性格も対照的。生徒会長の東堂は典型的な優等生でありながら腹黒で(笑)、學園内で起こる事件の背後を見透かして上手く立ち回っていそうな雰囲気。

 舞台が男子校なので登場人物はみな男ばかり。女っ気がなくて殺伐としているかと思いきや、そのあたりも作者は分かっているようで、ある ”仕込み” がある。それがどんなものかは読んでのお楽しみだろう。

 本書はシリーズ化されていて、5巻目まで出ている。そこで完結なのか、続編があるのかは分からないが。2巻以降も手元にあるので、ぼちぼち読んでいこうと思ってる。

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