評価:★★★★
秋田県御荷守村。そこで信仰される「貴神様」では50年に一度、「嫁取り」儀式が行われていた。
大正12年、神に嫁ぐ「御台」に選ばれた北白真棹は、”婚礼の夜” に超人的な力で人を殺める少年と遭遇する。昭和48年、星川瑞希は「御台」候補に選ばれたが、他の候補者たちが次々に殺されるという事件が起こる。そして令和5年、新人記者・幸広蒼は50年前の事件を調べるうちに、驚くべき事実を知る・・・
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全体は三つの章に分かれ、50年おきに三つの時代の物語が語られる。
秋田県の山中にある御荷守(おにもり)村。そこで信仰される「貴神様」では50年に一度、「嫁取り」儀式が行われていた。神に嫁ぐ「御台」は、村の四つの名家である東峰(とうみね)家・西練(にしねり)家・南瀬(なんせ)家・北白(きたしろ)家の中から選ばれる習わしだ。
「第一部 大正十二年 北白真棹」
大正12年(1923年)。御荷守村は50年に一度の「嫁取り」の年を迎えた。しかし世界中で大流行して一億人以上が死亡したスペイン風邪(インフルエンザ)の猛威からは村も逃れられず、「御台」候補の娘たちが次々に感染死してしまう。しかし儀式は行わなければならない。そこで候補の一人だった姉に代わり、17歳の妹・真棹(まさお)が「御台」になることが決まる。しかし強制的に女学校を退学させられた真棹は納得がいかない。
「御台」となった者は、「嫁取り」後に神社で神職に就くとされているが、儀式後にその姿を見た村人はいない。いったい「御台」とは何なのか? そして「御台」となった女性はどうなってしまうのか?
真棹と女学校時代に知りあった陸軍少尉・鷹頭恭平(たかとう・きょうへい)は、彼女が意に沿わぬ ”婚礼” を強いられていことを知る。彼は真棹を連れ出して村から脱出しようとするが、2人の前に現れたのは、超人的な力で人を殺める謎の少年だった・・・
「御台」となった者は、「嫁取り」後に神社で神職に就くとされているが、儀式後にその姿を見た村人はいない。いったい「御台」とは何なのか? そして「御台」となった女性はどうなってしまうのか?
真棹と女学校時代に知りあった陸軍少尉・鷹頭恭平(たかとう・きょうへい)は、彼女が意に沿わぬ ”婚礼” を強いられていことを知る。彼は真棹を連れ出して村から脱出しようとするが、2人の前に現れたのは、超人的な力で人を殺める謎の少年だった・・・
「第二部 昭和四十八年 星川瑞希」
昭和48年(1973年)。星川瑞希(ほしかわ・みずき)は劇団の研究生。女手ひとつで彼女を支えた母が交通事故に遭い、意識不明状態になってしまう。そして判明したのは、母の戸籍が存在しなかったこと。混乱する瑞希の前に現れた医師・東峰勝蔵(しょうぞう)は、彼女が東峰家の血を引いていると告げる。
勝蔵の経営する病院に母を入院させるため、瑞希は母の故郷である秋田県、かつて御荷守村と呼ばれていた場所へ向かう。さらに、瑞希と母親が村を出た事情も聞かされる。
村では50年振りに行われる「嫁取り」の準備が進み、瑞希も東峰家の御台候補として儀式に参加することになった。
四家それぞれを代表する御台候補四人。しかしその候補が次々に惨殺されるという事件が発生する・・・
勝蔵の経営する病院に母を入院させるため、瑞希は母の故郷である秋田県、かつて御荷守村と呼ばれていた場所へ向かう。さらに、瑞希と母親が村を出た事情も聞かされる。
村では50年振りに行われる「嫁取り」の準備が進み、瑞希も東峰家の御台候補として儀式に参加することになった。
四家それぞれを代表する御台候補四人。しかしその候補が次々に惨殺されるという事件が発生する・・・
「第三部 令和五年 幸広蒼」
令和5年(2023年)。幸広蒼(ゆきひろ・あおい)は週刊誌の新人記者。彼女は50年前に御荷守村で起こった惨劇について調査を開始する。その中で、かつて御台候補だった女性と遭遇するが、彼女は50年前に死んだはずだった。さらにその女性の若い頃の写真を手に入れた蒼は愕然とする。自分がその女性と酷似した容貌であることに・・・
三部合計で500ページを越える大長編。三部それぞれが異なる描き方なのも本書の特徴。そして各部でヒロインとなる女性が、みなとても魅力的なのもスゴくいい。
約120ページの第一部は、堂々のホラー・アクション。「貴神様」から出現した少年のモンスター振りが途方もない。その超常の力の前には、人間の抵抗など蟷螂の斧。破壊と殺戮の描写が凄まじい。
第二部は約210ページと本書で最も長い。山中にある因習に満ちた村、四つの名家の勢力争い、村に伝わる数え歌の歌詞の通りに起こる猟奇的な殺人とくれば、もう横溝正史の伝奇ミステリの世界。
最後には一応の解決は提示されるが、第一部から続く御荷守村の謎については第三部へ持ち越される。
そして完結編となる第三部は約180ページ。科学技術も進歩した現代で展開する物語は、古からの村の信仰に新たな角度から光を当てる。さらに第二部の事件も再解釈され、真相が明らかになる。
本書の根底を占める謎である「貴神様」の正体・「嫁取り」の意味・「御台」の役割についても科学的に説明されるものの、その内容は驚くほどおぞましく、エゴに満ちたものだ。
分類すればSF。それも日本のSFが元気いっぱいだった1970年代の頃を思い出させる。往年の半村良や小松左京を彷彿とさせるネタだ。考えてみれば、第二部の舞台だった1973年も横溝正史ブームの頃だった。
作者のデビュー作『不在の生存証明』(別題『そして、よみがえる世界』)は近未来を舞台にしたSFミステリだったが、今作は過去~現代を舞台にホラー・ミステリ・SFを一体化させた作品になった。この人は何でも書けるんだねぇ。次回作も期待してしまう。

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