ワトソン力



評価:★★★★

 警視庁捜査一課の和戸宋志には不思議な能力がある。傍にいる人間の推理力を飛躍的に向上させることができるのだ。そのおかげで様々な事件の解決に関わってきた。
 その和戸が何者かに拉致・監禁されてしまう。自分の ”力” に気づいた者の仕業ではないかと考えた和戸は、過去の事件を回想して拉致犯を突き止めようとするが・・・

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 警視庁捜査一課の和戸宋志(わと・そうじ)には不思議な能力がある。傍にいる人間の推理力を飛躍的に向上させることができるのだ。シャーロック・ホームズが名探偵だったのも、助手のワトソンにこの力が備わっていたからかも知れないと思い、ワトソンはこの力を ”ワトソン力(りょく)” と呼んでいる。

 ところが和戸自身が何者かに拉致・監禁されてしまう。彼の ”ワトソン力” に気づいた者が、それを利用しようと考えたのかも知れない。和戸は過去の事件を回想して拉致犯を突き止めようとするが・・・


「第一話 赤い十字架」

 和戸が宿泊したマンションで殺人事件が起こる。現場にはダイイング・メッセージが。

「第二話 暗黒室の殺人」

 地下二階にあるギャラリーが突然停電し、その闇の中で彫刻家が撲殺される。

「第三話 求婚者と毒殺者」

 大企業の会長の娘が婿選びをするパーティーで、候補者の一人が毒殺される。

「第四話 雪の日の魔術」

 シートで囲まれた中で男が銃で撃たれて死亡する。しかし周囲は雪で足跡がない。

「第五話 雲の上の死」

 羽田発ロサンジェルス行き航空機の機内で毒殺事件が起こる。

「第六話 探偵台本」

 火事に遭った脚本家が意識不明に。焼けて失われた脚本の結末部分の内容は?

「第七話 不運な犯人」

 和戸が乗った高速バスがバスジャックに遭う。しかしその車内で死体が発見される。


 どの事件でも、関係者が次々に自分の推理を述べ始めるという展開に。推理力が向上するとはいっても人によって思考の方向性は異なる。個々の推論の結果は様々で必ずしも真相にたどり着くわけではない。なので、本書はいわゆる「多重推理もの」のバリエーションになる。

 一つの事件に対して「よくまあいろいろと考えつくなあ」と感心する。何通りもの真相を提示してみせる作者の手腕は流石の一言。

 本書はシリーズ化されていて続編も刊行されている。文庫になったら読みます(笑)。

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