評価:★★★★☆
クリスマスに湧く英国カンブリア州。ある運輸会社の事務所で、ミサが開かれた教会で、そして精肉店で、切断された人間の指が発見される。そして現場には「#BSC6」という謎の文字列が残されていた。
被害者3人の身元を突き止め、猟奇的なシリアル・キラーの正体に迫ろうと捜査を開始する部長刑事ワシントン・ポーと天才分析官ティリー・ブラッドショー、そして仲間たちだが、やがて事件の背後に潜む巨悪の存在に気づく・・・
刑事ワシントン・ポー・シリーズ、第3作。
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クリスマスに湧く英国カンブリア州。ある運輸会社の事務所で、ミサが開かれた教会で、そして精肉店で、切断された人間の指が発見される。そして現場には「#BSC6」という謎の文字列が残されていた。
指はそれぞれ二本ずつ。一本は生前に、一本は死後に切断されており、3人の犠牲者が存在することが確定する。
NCA・SCAS(国家犯罪対策庁・重大犯罪分析課)の部長刑事ワシントン・ポーによる捜査は、被害者3人の身元を突き止めるところから始まる。そのうちの一人の住居近くで犯人につながる手がかりが発見される。
やがて犯人が逮捕されて事件終結かと思われるが、ポーは納得がいかない。さらに捜査を続けるうちに、捕まったのは実行犯であり、その背後には殺人を立案し、実行へと誘導していった者が存在する可能性が浮上してくる・・・
タイトルにある ”キュレーター” とは、日本語では「学芸員」と訳されることもあるが、欧米では一般に博物館・美術館などの展覧会を企画・監督する専門管理職のことをいう。本書においては事件の背後にいて殺人計画を企画・実行させた ”真犯人” を指す言葉として用いられる。ポーたちは、この姿を見せない ”キュレーター” を探すことになる。
文庫で約600ページという大長編なのだが、先行する二作と同様にリーダビリティは抜群で、すいすい読める。その理由の一つに本書の構成があると思う。本編は全90章からなり、平均6~7ページごとに次章へ進む。章の最後には次章への ”惹き” があり、興味を繋いでいく。そのおかげでページがどんどんめくれるのだろう。
もちろん、内容もいい。冒頭で発見される ”指” から始まり、大小様々の謎が提起されていく。そして目の前の謎が解かれると、その先にまた新たな謎が現れるという案配。これが絶妙だ。
このシリーズはページ数が軒並み重量級サイズなのに、ストーリーのテンポが早いも特徴。特に大きく物語が動くのが中盤過ぎで、”キュレーター” の最後のターゲットと思われる人物が明らかになる。もちろんそこからも事態は二転三転し、ラストにおけるポーとの対決の場面まで、謎解きとサスペンスが連続する。
主役となるポーは、いわゆる「はみ出し刑事」。しかし、直感で動いているようだがその裏には綿密な思考があり、極めて論理的に事件を捉えて全体像を描こうとする。
対して ”キュレーター” は事件の奥深くに隠れていて、容易に正体を掴ませない。時には偽の証拠を残して、捜査を誤った方向へ誘導しようとする。
ポーもまた、捜査が進み ”キュレーター” に近づいているはずなのだが、今ひとつ合点がいかない。物語はポーと ”キュレーター” との頭脳戦の様相を示すのだが、これも毎回のパターン。今回の敵が張り巡らした「仕掛け」は実に壮大で、その核心に迫るのは容易ではない。
とは云っても、壮大すぎて「いくらなんでも、そこまでやるか」と思わなくもない。だけど考えてみれば、殺人現場を一生懸命に手間暇かけて密室にする話を喜んで読むのがミステリ・ファンなのだから、殺人という行為にコストパフォーマンスを期待してはいけないだろう(笑)。読者は「おお、よく頑張ったなぁ」って ”キュレーター” くんを褒めてあげるべきだ(えーっ)。
ポーとタッグを組む頼もしい相棒はティリー・ブラッドショー分析官。彼女の相変わらずの天然ぶりに癒やされる(おいおい)。強い信頼で結ばれた二人の掛け合いも楽しい。
二人の上司のステファニー・フリン警部、凄腕の病理学者エステル・ドイルなどレギュラー陣に加え、今回はFBIの特別捜査官まで出てくる。ポーの捜査にどう絡むのかは読んでのお楽しみだろう。
考えてみたら、ポーの周囲のスタッフはなぜか女性ばかり。だか色恋めいた話は1ミリもなく、みな犯罪捜査のプロフェッショナルぶりを遺憾なく発揮する有能な人材だ。彼らのチームワークもこのシリーズの読みどころだろう。
このシリーズはあと3作が邦訳されている。奮発して全部手に入れたのだけど、まとめて読まずに月イチくらいのペースでゆっくり読むつもり。
お楽しみは長く味わいたいよねぇ・・・

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