機巧のテロリスト 北のSLBMを阻止せよ



評価:★★★★

 北朝鮮が40発のSLBM(潜水艦発射ミサイル)を製造したという情報が脱北者からもたらされた。しかし北朝鮮にはそれを搭載できる潜水艦はない。自衛隊情報部は、核弾頭を搭載したミサイルを発射装置ごと海流に乗せ、日本近海を通過させてアメリカ近海へ到達させる計画と推測する。
 折しも屋久島沖で北朝鮮貨物船から重量物投下が確認される。海自掃海部隊の三杉一尉は投下物の回収を、特別警備隊の三杉一尉は貨物船を急襲するため出動するが・・・

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 秋田に漂着した脱北者から驚くべき情報がもたらされる。北朝鮮が40発のSLBM(潜水艦発射ミサイル)を製造したというのだ。しかし北朝鮮にはそれを搭載できる潜水艦は存在しない。

 自衛隊情報部は、核弾頭を搭載したミサイルを発射装置ごと海流に乗せ、日本近海を通過させてアメリカ近海へ到達させる計画と推測する。その後ミサイルは発射装置ごと深海へ沈められ、電波信号による発射を待つ。海底に沈んだミサイルを発見することはほぼ不可能であるため、これが成功すれば、北朝鮮はアメリカの喉元にナイフを突きつけることになる。

 折しも屋久島沖で北朝鮮貨物船から重量物が投下されたことが確認される。直ちに投下物(ミサイル)の回収が立案されるが、もし北朝鮮側に気づかれたら、彼らは直ちにミサイルを太平洋沖にミサイルを沈め、以後は日本を標的とする計画に変更するものと推測された。そこで極秘の内に自衛隊の掃海部隊と特別警備隊に出動命令が下る。

 本書の主人公は二人。まずは掃海部隊で機雷の水中処分を担当する大越保(おおごし・たもつ)一等海尉。

 大越たちがはまず漂流物を発見しなければならない。さらに、それがミサイルであることを確認の上で、解体のために内部構造を探る必要がある。しかしミサイルはいつ深海に沈降させられるかわからないため、まずは浅瀬の海まで運ばなければならない。

 もう一人の主人公は特別警備隊の三杉鉄郎(みすぎ・てつろう)一等海尉。大越とは一般曹候補学生のときから同期であり、三杉の妻・紗雪(さゆき)は大越の妹だ。

 ミサイル群は常にモニターされ、位置を把握されているはずだ。その制御装置は投下した北朝鮮貨物船にある。投下されたミサイルすべてを発見するのは至難の業。三杉たちの任務は、ミサイルを投下した北朝鮮貨物船を急襲し、制御装置を抑えて位置データを入手すること。

 中盤では幾重もの難関を越えながら任務を全うするべく奮闘する大越たち掃海部隊の活躍が描かれ、後半では貨物船を奇襲する三杉たち特殊部隊と、朝鮮人民軍の兵士たちとの壮絶な激闘が繰り広げられる。

 作者はいままで自衛隊を主役したミリタリー・サスペンスを発表してきたが、本作は個人的にはベストじゃないかと思う。

 作中には「北朝鮮にはSLBMを搭載できる潜水艦はない」とあるが、2025年12月の終わりに『北朝鮮が排水量約8700トン級の「原子力戦略誘導弾潜水艦(戦略原潜)」の写真を公開した』『艦橋部分に潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)を10基も搭載する前例のない構造』だというニュースがあった。もっとも、専門家によるとかなり眉唾なモノらしい。

 とはいえ、軍拡に熱心なあの国のことだから、いつか実用化するかもしれない。この手の話はずっとフィクションのままでいてほしいのだが、現実はそう甘くないのか。

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