栞と嘘の季節



評価:★★★★

 高校で図書委員を勤める堀川と松倉は、返却された本に毒草であるトリカブトの花を加工した栞を見つける。持ち主を探し始めた二人の前に現れた同級生の女子・瀬野は、栞を奪って焼き捨ててしまう。その翌日、男性教師が倒れて病院へ搬送される騒ぎが起こる。
 栞を作り、そしてそれをばら撒いている者がいる。それは誰か? その目的は?
 図書委員コンビが活躍するミステリ、シリーズ第2巻。

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 物語は、北八王子市にある高校で図書委員を務める堀川詩門(ほりかわ・しもん)と松倉次郎(まつくら・じろう)が、図書館で返却された図書を書架に戻す作業をしているところから始まる。

 返却された『薔薇の名前』(ウンベルト・エーコ)の下巻に、トリカブトの花をラミネート加工した栞が見つかった。トリカブトは猛毒を持つ植物として知られる。

 二人は栞の持ち主を探し始めるが、そこに現れた同級生の女子・瀬野(せの)は栞を奪い取り、焼き捨ててしまう。そしてその翌日、男性教師が倒れて病院へ搬送されるという騒ぎが起こる。

 やがて同じトリカブトの栞が複数枚つくられ、それを配布している者が存在することが判明する。二人はその秘密へ迫っていくのだが・・・


 主役は前作から引き続き堀川と松倉。ちなみに物語は松倉の一人称で進む。二人は友人ではあるが、いわゆるべったりという関係ではなく、つかず離れず適度な距離を保っている。だから相手のことで知らないこともたくさんある。実際、終盤になって松倉は堀川の意外な一面を知ることになる。

 本作でメインとなるゲストキャラが瀬野さん。「ずば抜けた美人だが性格が悪い」と評される女子生徒だ。

 登場当初はかなり鼻っ柱が強そうにみえるのだが、読み進みにつれてだんだん性格がわかってくる。たしかに素直ではないが、曲がっているわけでもない。反抗的に見える時もあるが、それも行動に自分なりのポリシーを持っていて、周囲と安易に馴れ合うことをせず、孤立を恐れないから。

 まあ、彼女がこんな性格に「育ってきてしまった」のにはいろいろ経緯があるのだが、それも作中で徐々に明かされていく。特に瀬野さんの「下の名前」は終盤で明かされるのだが、これも彼女の性格形成に影響を与えただろうとは思う。あんまり書くとネタバレになるが、彼女もいろいろ苦労はしてきた、とだけ書いておこう。

 二人の同級生で図書委員長の東谷理奈(ひがしや・りな)、一年の図書委員・植田登(うえだ・のぼる)、写真部員の岡地恵(おかち・めぐみ)をはじめとして、少なくない人物が登場するが、それぞれ個性的に描き分けられているのは流石だ。

 二人が出会うこれらの人々から、さまざまな情報が入ってくる。けれどもタイトルにもあるように、その中には「嘘」も含まれる。あるいは知っているけどあえて口にしないこともある。まあ初めて会ったような相手に対して最初から内面を全公開する人もいないだろうけど。

 そしてこれは彼らだけでなく、堀川と松倉にも当てはまるのが面白い。上にも書いたが、この二人は友人ではあるけれど、お互いを知り尽くしているわけではないし、自分の情報を相手に対してフルオープンにしてもいない。ストーリーが進むにつれて、読者はそんな二人の新たな一面を知っていくのも興味深いことだろう。

 本書は通常のミステリのように終盤で探偵役がまとめて謎解きをする、というパターンではない。堀川と松倉が、足を使って集めてきた「不正確な真実」をつき合わせ、組み合わせることで、真偽を判別し、薄紙を一枚ずつ剥がしていくように事件の真相に迫っていく。このあたりの展開の描き方も素晴らしくよくできてる。

 主な舞台が高校で、登場するキャラのほとんどが高校生なのに、恋愛要素がほぼゼロ(全くないわけではないが)というのもなかなかストイックな構成。だけど、間違いなくこの年頃の若者たちの青春を描いたミステリになっていると思う。

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