ブラックサマーの殺人



評価:★★★★☆

 カリスマシェフとして名を馳せたジャレド・キートンは、自分の娘・エリザベスを殺害した容疑で刑事ポーに逮捕され、裁判で実刑が下り収監された。
 しかしその6年後、エリザベスが生きて姿を現した。弁護士はジャレドの再審を請求し、釈放は時間の問題に。
 窮地に陥ったポーの元へ分析官ティリーが駆けつけるが・・・

 刑事ワシントン・ポー&分析官ティリー・ブラッドショーが活躍するシリーズ、第2巻。

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 主人公ワシントン・ポーは国家犯罪対策庁の重大犯罪分析課の部長刑事。

 かつて、ポーはカリスマシェフとして名を馳せていたジャレド・キートンを逮捕した。容疑は彼自身の18歳の娘・エリザベスの殺害。死体が発見されないまま裁判で実刑が確定し、ジャレドは刑務所へ。

 しかし6年後、そのエリザベスが姿を現した。見知らぬ男に拉致され監禁されていたと証言するが、その直後に姿を消してしまう。だが残された血液サンプルのDNA検査で、娘はエリザベス本人と確認された。
 弁護士はジャレドの再審を請求する。認められれば彼は釈放されてしまう。ジャレドのことをサイコパスだと確信しているポーには許しがたい事態だ。

 血液サンプルが偽物とすり替えられたものであることを立証すべく、ポーは採血に立ち会った警官、サンプルの輸送手段、分析を担当した3つの機関と監察医など、あらゆる経路を調査して回るが、結果はいずれも否定されてしまう。

 そして獄中のジャレドからは。そんなポーをあざ笑うかのように面会要求が届く。

 窮地に陥ったポーに追い打ちを掛けるように上層部は圧力を掛けてくる。能力はあるが独断で暴走することのあるポーは、組織からすれば邪魔者なのだ。
 孤立無援の中、ポーに援軍が現れる。前作でコンビを組んだ天才的な分析官ティリー・ブラッドショーが駆けつけてくれたのだ。
 藁をもつかむ思いで、ポーは血液サンプルの再分析を病理学者エステル・ドイルに依頼するのだが・・・


 タイトルの「ブラックサマー」は、ストーリーが三分の一ほど進んだあたりで出てくる。「死んだはずの人間が生きていた」という事実を支える ”血液サンプルのDNA”。シンプルであるがゆえに鉄壁とも言える謎。「ブラックサマー」は、その ”壁” にポーたちが見つけ出したほんのわずかな攻略への手がかり。それを突破口に、圧倒的に不利な状況からの逆転を信じて、ポーとブラッドショーの奮戦が始まる。

 ”エリザベス” の登場と血液サンプルの背後には、ジャレドの存在があるのは間違いないが、刑務所の中からどうやって実行した(させた)のか。ストーリーが進むにつれて、計画を実現させたジャレドの ”悪の天才” ぶりが明らかになっていく。

 肝心の血液サンプルのトリックの評価は分かれるかな。よく言えば、単純なだけに意外と見破られにくい「コロンブスの卵」とも言える。悪く言えば「そんなこと可能なのか?」と怒り出す(?)人もいるかも。でもまあそんなことは作者は百も承知で使っているのだろう。私は謎解き主体の本格ミステリなら許される範囲だと思うし、それを差し引いても十分に本書は面白い。

 探偵役のポーと犯人が、がっぷり四つに組んだ頭脳戦、サスペンスたっぷりながらスピーディで意外性に富んだ展開、そしてポーとティリーをはじめとする登場キャラたちの魅力でどんどん読ませるという前作の長所は本書でも健在で、楽しい読書の時間を提供してくれるシリーズになった。

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