評価:★★★★
資産家の伯父が亡くなり、里英の父は無人島を相続した。そこに持ち上がったリゾート開発計画。里英と父親、観光開発会社、建設会社の社員たち総勢9人は島へ渡る。
しかしその翌日、メンバーの一人が死体で発見される。犯人が残した紙片には「犯人を見つけてはならない」などの十項目の戒めが記されていた・・・
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大室里英(おおむろ・りえ)は19歳。芸大を目指している浪人生だ。
資産家の伯父が交通事故で急死し、里英の父は伯父が所有していた無人島を相続することになった。島の名は枝内島(えだうちじま)。和歌山県の沖合に浮かぶ、周囲1kmに満たない小さな島だ。そこには宿泊用のペンションが一棟、小さなバンガローが五棟、そして作業小屋がひとつだけ建っている。
その島をリゾートとして再開発する計画が持ち上がり、観光開発会社と建設会社の社員たちによる調査が行われることになった。里英は父と共にそれに同行することになり、総勢9名が島へやってきた。
調査を始めた一行は驚愕の事実に遭遇する。島に中央に建てられた作業小屋の地下室に爆薬が隠されていたのだ。それも、島全体を吹き飛ばせるのではないかと思われるくらい大量だ。しかも、スマホによる遠隔操作でいつでも爆発させられる状態になっていた。
「触らぬ神に祟り無し」とばかりに、爆弾を放置して全員がペンションに一泊したが、翌朝にその中の一人が死体で発見される。凶器はペンションにあったクロスボウ。里英の伯父のコレクションだった。
そして犯人が残した紙片には、「犯人を捜してはならない」「島外へ連絡してはならない」「三日間、島から出てはならない」などの十項目の戒めが記されていた。これを破ると作業小屋の爆薬が起爆し、全員が死ぬのだと。
作業小屋の地下室は施錠され、中へ入れなくなっていた。爆発を止める術はなくなり、残った8人は犯人の指示に従うことになった。しかし、さらなる殺人が発生する。
参加メンバーの一人である綾川(あやかわ)は観光開発会社の研修社員で、里英の次に若い女性だ。年齢が近い二人はすぐに親しくなっていく。
犯人からは禁じられていたが、綾川は密かに犯人を突き止めるべく、里英と共に行動を開始する。しかし・・・
探偵役となる綾川は、第二の殺人で現場に残された足跡から論理的に真犯人を導き出してみせる。それで一件落着かと思いきや、最後にもうひとひねり。このあたり、流石は『方舟』の作者だと改めて感心してしまう。
2022年のミステリランキングで上位に入った『方舟』に続き、聖書がらみのタイトルとなったが、宗教的な意味合いは全く無い。
共通点としてはどちらもクローズト・サークル(『方舟』は地下施設、本書は孤島)における連続殺人、そしてそこからの脱出劇を描いているところだ。
とはいっても『方舟』と本書にストーリー上のつながりは全くない。だが、これから本書を読もうとする人で、もしも『方舟』を未読の方がいたら、そちらを読んでから本書に取りかかることをオススメしておこう。

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