評価:★★★★
配達員の千真の前に現れたのは、一年前に死んだ恋人と瓜二つの女性。名も「夕海」と、これも恋人と同じ。千真は記憶がない彼女を連れ帰り、保護することに。
数日後、仕事で恩師の家を訪れた千真は、そこで女性の刺殺死体を発見する。それは一年前に死亡した恩師の妻とそっくりだった。しかも現場は密室状態。
なぜ死者が甦ってくるのか? いったい、何が起こっているのか?
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西暦2021年。日本列島を巨大な「災厄」が襲い、人々がマスクをして生活をしている時代。
主人公の波多野千真(はたの・かずま)は20歳。大学生だが「災厄」のために授業は休講が続き、アルバイトで配達員をしている。各家庭をバイクで回って荷物を配送するのが仕事だ。
ある夜、仕事中の千真は路上で倒れていた女性を発見する。助け起こした千真は驚愕する。一年前に亡くなった恋人・成瀬夕海(なるせ・ゆうみ)とそっくりだったのだ。
彼女もまた「夕海」と名乗り、18歳だという。2年前、18歳だった夕海は千真と知りあって恋人となり、19歳で「災厄」によって死亡した。千真は遺体にも対面している。彼女が死んだのは間違いない。
「夕海」の語る生い立ちは、千真の記憶にある夕海と同一だった。しかし、千真との記憶は全くないという。千真に出会う前の18歳の彼女が甦ったのか・・・?
千真は「夕海」を自分のアパートに連れ帰って保護した。奇妙な共同生活が始まるが、やがて彼女も働きたいと言いだし、千真の配達員の仕事に加わることになった。
ある日、二人は千真の中学校時代の恩師である金森曜輔(かなもり・ようすけ)の自宅を訪れる。彼は不在だったが、代わりに二人が発見したのは女性の刺殺死体。そしてその顔は、一年前に死んだ金森の妻にそっくりだった。しかも現場は密室状態だった・・・
特殊設定が流行っている昨今、”死者が甦る” という現象の説明には、ファンタジックな設定やSF的な設定など、いろいろ考えられるだろう。
実際、途中に挟み込まれる「インタールード」という章の中では、いくつかのエピソードが語られ、一連の事態の背後には確かに ”何らかの動き” があることが示される。それによって読者の頭の中にはいろんな状況設定を思い浮かぶだろう。
一方で、ともに暮らす千真と「夕海」は互いに惹かれ合っていく。あたかも2年前に出会った頃からやり直すかのように。だが・・・
最終章に至り、作品世界の全貌が明かされる。これは意外極まるもので、(私を含めて)ほとんどの読者にとって想像もできなかった内容だろう。予想外すぎて怒り出す人がいるかもしれない(笑)。でも、冒頭からちゃんと伏線が張られていたこともわかるし、私は素直に白旗を掲げよう。そのなかで、”甦りの真相” についても明かされる。
ミステリ的な謎解きと物語の感動が一体化したラストシーンに、読者は本書がラブ・ストーリーとしても一級品だと知ることになるだろう。

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