『雪風 YUKIKAZE』感想 後編 あるいは長い長い愚痴


 後編では、この映画に対する愚痴を延々と書いてある。この映画が気に入った人、好きになった人にとっては極めてオモシロクナイ文章になっていると思うので、そんな人は以下の文章は読まないことを推奨する。 


■『雪風 YUKIKAZE』についての長い長い愚痴

●没入感

 本作の題材は「軍艦」、そして「戦争」だ。いわば ”非日常の世界”。

 映画にとって大事なことは何かと問われたら、答えは人それぞれだろう。私も問われたらいろいろ思いついて一つに絞れないと思うが、その中でも大きいウエートを占めていると思っているのは ”没入感” だ。
 日常を離れて映画の中の世界へ入り込み、そこで ”日常では味わえない体験” をする。そのために時間を使い、2000円という安くはない金を支払う(もっとも、私はシニア料金なので1100円だったが笑)。
 では本作はどうだったのか。こと ”没入感” に関してはかなり辛い点をつけざるを得ない作品になってしまっていたと思う。


●CG・VFXについて

 本作の主役は「雪風」という駆逐艦だが、もちろんスクリーンには「雪風」以外の艦船も登場する。戦艦だったり空母だったり。敵の艦船も登場するし、戦闘機や爆撃機・雷撃機などの航空機も登場しなければならない。必然的にVFX、それもCGの比重が大きくなるのは当然だと思うのだが、それがどうにも物足りないのだ。

 「雪風」本体の近距離に寄って ”見せる” 絵が少ない(これは他の艦船も同じ)。戦闘シーンも上空から俯瞰する絵ばかり。だから「雪風」がそのときどんな状況にあって、どれくらいの危機を迎えているのかが今ひとつ伝わってこない。
 セット撮影した映像との整合性も気になった。「雪風」の艦上でドラマが進行する関係上、甲板のセットを組んで撮影が行われるのだが、そのセットとなる艦体が綺麗すぎるのだ。

 最初はいい。だけど航海や戦闘が進んでいけば汚れていくだろう。まあマメに掃除をしていたから綺麗なんだろうと脳内補正していたのだが、戦闘の最中や戦闘後も綺麗なままなのは如何なものか。被弾して燃えたり煤けたり、戦闘機の機銃掃射だって受けているはずで、負傷者も出ている。なのに弾痕はおろか焦げ跡のひとつもないし、血しぶきも飛んでない(唯一、ラスト近くのあるシーンでだけ派手に飛んでるが)。

 皮肉にも、CGのほうの「雪風」は戦闘が進むにつれて、しっかり汚れもつくし被弾するシーンも描かれている(ように私には見えた)のだが、セットの場面に切り替わるときれいな艦体が映る。いくらなんでもこれは不味いだろう。

 ハリウッド映画ばりの映像にしろとは云わないが、邦画だって『ゴジラ-1.0』という作品が登場してハードルが上がってしまったからねぇ。アカデミー特殊効果賞に対抗するのは無理にしろ、ちょっとは意地を見せてほしかった。


●使い回し

 劇中、再三登場するのが海に投げ出された他艦の乗組員を救うシーンと、敵航空機に向けて対空機銃を撃つシーン。

 前者はひたすら縄ばしごを昇ってくる乗組員に「雪風」乗員が手を伸ばす。後者は機銃の後ろに控えた射手が口を開けて叫びながらひたすら撃ちまくる。ところがどちらのシーンも同じような構図で同じような絵面が繰り返される。TVのバラエティ番組みたいに同じビデオを使い回してるんじゃないかと思ってしまう。

 素人考えかもしれないが、アングルや構図を変えたり、被写体に引いたり寄ったり、工夫すればいくらでも変化をつけられそうな気がするんだけど、そんなことはせず、同じような映像が繰り返される。

 予算の都合だろうと思ってるのだが、あえて同じような映像を繰り返して使っているのだったら、その演出意図が知りたいものだ。


●役者さんの肉体

 いま、NHKの朝ドラ『あんぱん』を観ているのだが、この作品、過去になく戦中のシーンが長いので話題になった作品だ。そこで登場する男優さんは兵隊として最前線に出ているわけで、出演している男優さんはみなそれなりの減量をして取り組んでいる。まあいくら何でも病人並みにげっそりしている人はいないが、普段よりは痩せているのは分かった。


 それに対して、この映画に登場する若手の俳優さんを観て、けっこうふくよかなのに違和感を感じた。当時の海軍の食糧事情を詳しく知らないのだけど、玉木宏さんがけっこう精悍な顔つきになっていたので、そんなに腹一杯は食えなかったのだろうと推察した。もっとも、作中で上半身裸になった玉木宏がボディビルで鍛え上げたかのような筋肉ムキムキだったのには呆気にとられてしまったが。


●某アニメのオマージュ?

 ラスト近く、「雪風」艦長だった寺澤が亡くなるのだが、これは『〇〇〇』の某シーンを彷彿させる。オマージュなのかもしれないが、余計な演出だったと思う。これで感動する人より呆れかえる人の方が多いんじゃないかなぁ・・・少なくとも私は後者だった。


●35年後のエピソード

 これについてもあまりいい評判はないみたい。私自身はこういう後日談は嫌いじゃないんだけど、アクセサリーの扱いはもう少し気を遣うべきだったとは思う。


●最期に

 シナリオやストーリーについても、もっと愚痴はあったのだけど、もういい加減書いてきたので終わりにしよう。こんなに長く書くつもりはなかったんだけど、ものが「雪風」だからねぇ。それなりに思い入れもあるし、いろいろ不満を感じてしまった。
 これが20年前、30年前の邦画だったらまだ許せたかもしれない。「がんばったね」って云ってもらえたかもしれない。
 でも今やTVコマーシャルやネットでもCGが豊富に使われていて、流麗かつリアルな動画が溢れている時代になってしまった。それを考えたら、なかなか手放しで素晴らしいとは言いがたい映像だろう。
 いろんな意味で ”残念” な思いを感じた映画でした。

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