スクイッド荘の殺人



評価:★★★★

 烏賊川市の有力企業社長・小峰三郎は命を狙うという脅迫状を受け取った。三郎から護衛を依頼された私立探偵・鵜飼は、ゲソ岬に建つ観光施設・スクイッド荘にやってきた。しかし折からの大雪で孤立したスクイッド荘で三郎は殺されてしまう。
 三郎の兄・一郎は20年前、バラバラ死体となって発見されていた。三郎の事件はこれに関わりがあるのか・・・

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 烏賊川(いかがわ)市の有力企業社長・小峰三郎(こみね・さぶろう)は命を狙うという脅迫状を受け取った。三郎から護衛を依頼された私立探偵・鵜飼杜夫(うかい・もりお)は助手の戸村流平(とむら・りゅうへい)を伴い、ゲソ岬の突端に建つスクイッド荘に向かう。そこは三郎が所有する観光施設だった。


 ちなみに「スクイッド(squid)」とはイカのこと。スクイッド荘は本館とは別に10戸の離れがあり、それぞれが本館と小径でつながっている。文庫表紙のイラストを見てもらえば分かるが、まさにイカ風の外見をしている。

 折からの降雪でスクイッド荘までの道路は寸断、鵜飼たちは途中で事故を起こして立ち往生している軽自動車を見つける。その中には怪我で意識を失った青年がいて、免許証から「黒江健人」と云う名だと判明する。鵜飼たちは黒江も一緒に乗せてスクイッド荘にやってきた。しかし意識を取り戻した黒江は姿を消してしまう。

 烏賊川署の砂川警部と志木刑事は、鵜飼からの電話でスクイッド荘の状況を知る。そこで ”小峰三郎” という名に反応した砂川は、退職した元警部補・黒江譲二(くろえ・じょうじ)に会いに行く。どうやら黒江健人は譲二の息子のようだ。
 一方、大雪によってスクイッド荘は完全に孤立してしまう。さらに三郎が何者かに襲撃され、死亡する。今際の際に「くろえ・・・けんと・・・」と言い残して。


 スクイッド荘内の事件と並行して、黒江譲二の口から20年前の出来事が語られる。

 烏賊川市の企業・『小峰兄弟社』の社長である小峰一郎がバラバラ死体となって発見された。一郎は三郎の長兄である。次兄の二郎は事件後に行方をくらましていた。
 捜査に当たった譲二は、ハワイからやってきた私立探偵ダニエルと出会う。マリアという女性を探して烏賊川市へやってきたダニエルも、譲二とともに殺人事件に巻き込まれていく・・・


 当代一のユーモア・ミステリ作家だけあって、全編にわたってこれでもかとギャグが詰め込まれている。それを、文庫で480ページに渡って最後までやり通すのだから恐れ入る。”笑わせる” のは ”泣かせる” より難しいとよく言われるが、そう考えると並大抵の努力ではないと思うのだが、それをつゆとも感じさせないのはたいしたもの。その膨大なギャグの重要な合間に伏線を突っ込んでくるのも上手い。

 特に本書のメインのネタと言えるものは、分かってみれば脱力ものなのだが、それを最後まで読者に悟らせないのは、もう匠の技の領域なのかも知れない。


 ちょっと不満なのは二宮朱美(にのみや・あけみ)さんの出番が少ないことかな。でも今回のストーリーでは絡ませにくかったのも分かる。彼女の活躍は次作に期待だね。

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