評価:★★★
女性作家集団アミの会による、「お金」にまつわる悲喜こもごもを描くアンソロジー。
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「百万円分の価値」(新津きよみ)
宝くじ三等に当選し百万円を手にした74歳の純子。いままで平凡な専業主婦で、家族のためにつましく生きてきた。しかし中学校の同窓会に参加したことをきっかけに、(自分のために)「無駄を極めよう」と、百万円を使い始めるのだが・・・
「一生遊んで暮らせる方法」(原田ひ香)
語り手の児島珠美(こじま・たまみ)は36歳。役場の戸籍課で非常勤職員として働いている。6年前にサラリーマンの夫と結婚したが、どうやら彼はFIRE(Financial Independense,Retire Early:経済的自立・早期退職)に憧れているらしい・・・
「12万円わんこ」(大崎梢)
34歳の中島澄香(なかじま・すみか)は、担当するWeb記事のために中学校時代の同級生・中山莉々子(なかやま・りりこ)に会う。彼女の買っているタレント犬を取材するためだ。動物タレントの厳しい実情を知っていく澄香だが・・・
「廃課金兵は買い物依存症の夢を見るか?」(永嶋恵美)
大学職員の福本晴海(ふくもと・はるみ)と小野里美実(おのさと・みのり)は、コロナ禍をきっかけに仲良くなった。推しのキャラグッズを揃える晴海と、服を買い込むのが趣味の美実。オンライン飲み会を通じてお互いのことを知っていくのだが・・・
「わらしべ長者のつくりかた」(福田和代)
ビットコインに投資したことで資産をごっそり失った拓海(たくみ)は、「わらしべ長者になりたい」と言い出す。それを聞いた友人の祖父から勧められて手製の万華鏡を作り、それを持って公園へ出かけたところ、そこから人間関係がつながり・・・
「塾に行かない子どものための五つのクリンプス」(図子慧)
クルミはシングルマザーで、小学5年生の息子・聡太(そうた)を週3日、塾通いをさせている。しかし聡太が突然、塾へ行かないと言い出した。別れた夫・重則(しげのり)は、これを機会に中学受験専門の塾へ変えろと言い出すのだが・・・
ちなみに「クリンプス」とは「障害」の意味らしい。
「二千万円の差額」(松村比呂美)
5年前に夫を失ったことでパニック障害を発症、外出できなくなった美代子(みよこ)。娘の麻希(まき)は高校生の子ども二人を育てながら、美代子の元に通って面倒を見てくれる。ある日、美代子は一念発起して公園緑化のボランティアに申し込むのだが・・・
幸福になるためにお金は必ずしも必要ではないかもしれないが、お金があれば人生の問題のうちかなりの部分が解決するのも事実。だからお金はないよりはあった方がいい、というのは間違いないところだろう。
ただ、宝くじとかで億単位の賞金を手に入れた人が、必ずしも幸福にはなってないという話も聞く。もっともそれが本当かどうかは知らないのだけど(おいおい)。
まあ、そこそこのお金で分相応に慎ましく暮らしていくのが、平穏な人生を送るコツなのだろう。
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