評価:★★★★
弁護士のマークは「ロイストン事件」で異母弟を告発し、そのために父パトリックから絶縁された。マークは婚約者とも別れて町を出ることに。しかし4年後、マークは父からの手紙で呼び戻されることになった。父は「ロイストン事件」について再調査をしていたらしい。
しかしそのパトリックは新聞社で死体となって見つかる。父を殺した犯人をつきとめるべく、マークは行動を開始する。
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「ロイストン事件」とは、教師ロイストンが新聞社を相手取って訴訟を起こした事件のこと。弁護士として関わったマーク・ロヴェルは、新聞社側に不正があったとして、記者のデレクを告発した。
しかしデレクは、マークの父パトリックと後妻のイローナの間に生まれ、マークにとっては異母弟にあたる人物。そのためマークはパトリックから絶縁されることになった。
マークは弁護士の職を辞し、婚約者フランシス・チャールトンとも別れて町を出た。
しかし4年後、マークはパトリックから手紙を受け取り、町へ戻ってきた。父は「ロイストン事件」について再調査をしていたらしい。
しかしその父は、デレクが勤める新聞社で死体となって発見される。父を殺した犯人をつきとめるべく、マークは行動を開始するが・・・
4年前の事件のしこりは未だ残っている。デレクと新聞社主のポール・ウィラードは未だにマークを敵視しており、そしてデレクはポールの長女キャロルと婚約していた。
互いに想いを残しながらも別離を選択したマークとフランシス。しかも2人に流れた4年という時間は決して短くはなかった。再会した2人の関係がどうなっていくのかは読者にとっても大きな関心事だろうし、本書の読みどころのひとつでもある。詳しく書くとネタバレになるが、2人には終盤に大きなドラマがあるとだけ書いておこう。
そして物語の発端となった教師ヘクター・ロイストン。彼が何をやらかして新聞社とケンカする羽目になったかは作中で詳しく語られるが、これもなかなか一筋縄ではいかない癖の強いキャラで、殺人事件の関係者を振り回していく。
やがて第二の殺人が起こり、調査を進めるマークも何者かによる襲撃を受けるという波乱の展開に。
最終的にはマークの推理によって真犯人が特定されるのだが、これにはちょっと驚かされるだろう。物語の途中では、容疑の深そうな者が複数浮かび上がるのだが、なかなか真相に至ることができない。
作者は真相から読者の目を逸らせ続け、犯人に至る道を容易に悟らせない。分かってみれば犯人に到る道は実にシンプルなのだが、それがわからないんだよねえ。まさに匠の技といえるだろう。
故郷へ帰ってきたマークにとって、周囲は敵ばかりという四面楚歌の状態から始まった犯人捜し。それでも彼は不撓不屈の信念を揺るがせず、苦難を乗り越えて突き進んでいく。それが周囲との軋轢をも生んでいくのだけど、それもまたドラマになる。
そんな彼は最後にどこへたどり着くのか。
巻末の解説にもあるが、未来への希望が垣間見える最後の2ページ、とりわけラストの4行が素晴らしい。読者は十分に満足して本を閉じるだろう。
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