評価:★★★
江戸時代、町人文化華やかなりし文化・文政の御世。
戯作者・広塚伴内のもとへ持ち込まれる奇怪な事件を、腕利きの岡っ引きや毒舌の美人絵師などユニークな仲間とともに事件のカラクリを解いていく。
* * * * * * * * * *
町人文化華やかなりし文化・文政の御世。瓦版に雑文を書いて糊口を凌いでいる戯作者・広塚伴内(ひろづか・ばんない)の
もとへ、江戸の街で起こる奇怪な事件の数々が舞い込んでくる。
伴内は腕利きの岡っ引き・源七(げんしち)や毒舌の美人絵師・お駒(こま)などユニークな仲間とともに事件のカラクリを解いていく。
第一夜「鎌鼬(かまいたち)の涙」
蔵前の路上で近江屋の一人娘・お久の亡骸が見つかる。遺体の首は鋭い刃物で喉首を深く切られていた。現場は雨上がりの後で泥濘んでいたが、そこには被害者の下駄の跡しか残っていなかった・・・
第二夜「猫又の邪眼」
相模屋善兵衛(ぜんべえ)のもとへ脅迫状が舞い込む。「今月七日の句会にてお命頂戴つかまつる」。伴内は岡っ引きの源七とともに句会に出席することに。
句会は町から離れた田園地帯にある黒猫亭で開かれた。そのさなか、参加していた琴の師匠・お夏が中座したまま帰ってこない。一同が探した末、お夏は水車小屋の中で死体となって発見される。死因は毒殺らしいのだが、なぜか遺体の胸には激しく打ち据えたような傷跡が・・・
第三夜「産女(うぶめ)の落とし文」
若い娘が立て続けに三人、神隠しに遭うという事件が起こる。いずれも駕籠(かご)に乗っての移動中に、若い女の幽霊に出くわしたという。
腕に赤ん坊を抱え「この子を抱いてくれませんか」。
駕籠かきが近づくと幽霊は逃げてしまい、見失ってしまう。その間に娘が姿を消してしまっていた・・・
第四夜「縊(くび)れ鬼の館」
大店の質屋・伊勢屋幸兵衛(こうべえ)の妻・おみちが首を吊って死んだ。伊勢屋の最初の妻・お豊(とよ)は3年前に病死し、二番目の妻・おちかは昨年、酔って川に落ちて水死していた。
しかし幸兵衛は、おみちが自死するはずはないと主張し、伴内と源七は調査を始めることに・・・
第五夜「土蜘蛛の呪い」
南町奉行所の与力・八坂新九郎が殺された。友人と酒を飲んだ帰りに突然姿を消し、友人があたりを探し回って元の場所に戻ってきたら、そこに死体が転がっていた。
遺体の様子から、下手人は相手の背後から首に腕を回して押さえつけ。心臓のあたりに鑿(のみ)のような鋭い凶器を突き立てたものと思われた。
しかしそのような状況なら、死体はうつ伏せになるはずだが発見時は仰向け。さらに、新九郎は剣の達人で、やすやすと殺されるはずはないという・・・
第六夜「葛の葉狐の文箱(ふばこ)」
和泉(いずみ)屋は、江戸一番の版元だ。そこがなんと伴内の本を出すという。
その当主・徳兵衛(とくべえ)が伴内を呼び、戯作を出版する代わりにもう一編、自分の考えた話も書いてほしいと言い出す。それは『葛の葉』模様の文箱に纏わる話だという。
しかしその夜、徳兵衛が殺され、伴内は下手人として捕まってしまう・・・
基本的なフォーマットは、ホームズ役となる伴内の元に事件が持ち込まれ、ワトスン役となる源七とともに事件に当たる。捜査や解決には、飛礫(つぶて)の名手の色男とか毒舌の美人絵師とか早耳の瓦版屋とかのユニークな面々が加わり、”チーム伴内” となって活躍する。
分量的にも一話分が一時間のTVドラマに相当するくらい。作者は「人形佐七捕物帖」とか「特捜9」とかの脚本家が本業のようなので、これくらいの長さが書きやすいのかなとも思った。
あとミステリとしての特徴を挙げると、大がかりな物理トリックが用いられている作品が多いこと。中には、某有名古典作品を彷彿とさせるものもある。犯行の動機にも、この時代ならではのものがある。
現代でこれをやったら噴飯物の演出でも、街灯すらない江戸時代の夜の闇の中なら成り立つ話もあるだろう。
そして主役の伴内だが、その正体というか出自が明らかになるのが最終話。物語はこれで一区切りなのだが「第一シーズン終了」ともいえる感じで、その気になれば続けられるようになってるのもTVドラマっぽい。
TVにおける時代劇がほぼ絶滅状態の現在では難しいだろうが、映像になったものをみてみたい気はする。主演の伴内は誰がいいかな。ムロツヨシあたりが意外とハマる気もするけど(笑)。
この記事へのコメント