赤ずきん、ピノキオ拾って死体と出会う。



評価:★★★☆

 赤ずきんは猟師のおじさんにクッキーとワインを届ける途中、木でできた腕を拾う。それはピノキオのものだった。バラバラにされてしまったピノキオの身体を集める旅に出た赤ずきんは様々な事件に巻き込まれていく・・・
 『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』の続編登場。

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「第一章 目撃者は木偶(でく)の坊」

 赤ずきんは猟師のおじさんにクッキーとワインを届ける途中、木でできた腕を拾う。それはピノキオのものだった。
 ピノキオを探してランベルソの町へやってきた赤ずきん。そこには親指姫が率いるサーカス団『親指一座』が興行していた。しかし団員のアントニオが殺され、赤ずきんは容疑者として捕まってしまう・・・


「第二章 女たちの毒リンゴ」

 アプフェル国へやってきた赤ずきんは、森の中で七人の小人と暮らす白雪姫と出会う。継母(国王の後妻)であるヒルデヒルデの陰謀で、森の中に置き去りにされてしまったのだ。
 しかし小人の一人が謎の死を遂げてしまう。ゴブリンビーンズという猛毒の豆を口にしたらしい。一方、白雪姫が存命であることを知ったヒルデヒルデもまた、ゴブリンビーンズの毒をしみこませたリンゴをつくっていた・・・


「第三章 ハーメルンの最終審判」

 ハーメルンの町では音楽フェスが開かれようとしていた。
 45年前、ハーメルンの町にネズミが大量発生した。そこへ現れた笛吹き男によってネズミは一掃されたが、約束の金を払わなかったことから、笛吹き男は町中の子どもたちを掠ってしまった。その後笛吹き男は捕えられ、終身刑を宣告されて北の防壁の上に造られた檻に入れられていた。しかし笛吹き男は守衛を殺して脱獄に成功してしまう・・・


「幕間 ティモシー街角人形劇」

「第四章 なかよし子豚の三つの密室」
 赤ずきんがやってきたのは、豚の三兄弟が魔女マイゼンの力によって人間を豚に変え、強制労働をさせて栄えていたブッヒブルクの町。
 しかし三兄弟の長男のマイケルが、藁をモルタルで固めた家の中で死体となって見つかる・・・


 前作もそうだったが、童話の世界を本格ミステリに変換してみせる手際はお見事。キャラ設定もそれぞれ意表を突く変更をしているけど、それも面白い。

 白雪姫と継母の王妃の関係なんて、まさに「その発想はなかった」。
 ハーメルンの笛吹き男だって正体不明なのが当たり前だと思ってたけど、きちんと出自が描かれると納得してしまうし、その後についても「いかにもありそう」と思わせる。
 オオカミに狙われて逃げ回るだけだった三匹の子豚も、この世界では残忍な金の亡者になっていて、殺人事件の被害者になりそうな雰囲気は充分(笑)。
 それに加えて、この世界ならではの特殊設定(毒物の設定や魔法の存在)もきっちり組み込んでみせる。
 いつまでこのシリーズが続くのかは分からないけど、作者はいいネタの宝庫を探り当てたと思う。

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