世界でいちばん透きとおった物語2



評価:★★★★

 コンビ作家・翠川双輔のプロット担当が死去した。雑誌に連載中だった作品も中断となった。新人作家の藤阪燈真は、編集者の深町霧子とともに、その作品の解決編を探ることになったのだが・・・

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 『翠川双輔』(みどりかわ・そうすけ)は、プロット担当の菊谷博和(きくたに・ひろかず)と、文章担当の宇津木静夫(うつぎ・しずお)からなるコンビ作家だ。

 しかし菊谷が病死したことにより、雑誌に連載中だった作品『殺導線の少女』も、第三回を以て中断となってしまっていた。

 宇津木によると、執筆作業は完全分業で、プロットはすべて菊谷がつくっていたとのこと。しかも最近は締め切り直前までプロットが上がってこないことも多かった。だから結末についても知らされていなかったという。

 生前の菊谷は公の場にはほとんど姿を見せず、作家仲間ともほとんど交流を持たなかった。一番親しく接していたのは姪の倉石琴莉(くらいし・ことり)だったが、彼女がアメリカへ留学中に倉石は亡くなったので、『殺導線の少女』の結末については知らなかった。

 新人作家の藤阪燈真(ふじさか・とうま)は、編集者の深町霧子(ふかまち・きりこ)とともに、『殺導線の少女』の解決編を探ることになったのだが・・・


 『殺導線の少女』については、作中作として連載三回分すべてが載っているのだが、冒頭から女子高生が殺人を犯すなどなかなかエグい作品になっている。

 さらに、展開や描写に不可解な部分がいくつかあり、おそらくそれが結末に向けての伏線と思われた。

 燈真が関係者に当たって集めてきた材料を基に、終盤に於いて霧子が『殺導線の少女』の結末について ”ある推理” を示す。ここまでの展開では霧子がホームズ役、燈真はワトソン役という位置づけのミステリなのだが、本作はそれだけにとどまらない。

 霧子はあくまで脇役であって、物語に主体的に関わり、なおかつ最終的に物語を決着させる役目は燈真が務めている。彼が具体的に何をどうするのかはネタバレなので明かせないが、彼のもたらす結末はなかなか鮮やかに決まる、とだけ書いておこう。

 前作と今作、二作続けて読んでくると、この『世界でいちばん透きとおった物語』シリーズは、霧子と燈真のコンビの前に現れる(おそらく小説がらみの)事件や謎について、二人がそういう役割分担で取り組み解決していく、というパターンなのがわかる。もしシリーズに続刊があるのなら、これが踏襲されていくのだろう。


 ちなみに、コンビ作家と云って真っ先に私が思いつくのは「岡島二人」(おかじま・ふたり)。1982年に『焦茶色のパステル』で江戸川乱歩章を受賞してデビューし、1989年にコンビを解消するまでに30冊近い作品を発表したコンビ作家だ。もっとも、私が読んだのは『焦茶色-』を含めて2~3冊しかないんだけどね(笑)。

 そして本書の巻末の参考文献にはしっかり、コンビ結成から解散までの経緯を記した『おかしな二人 岡嶋二人盛衰記』(井上夢人)が載ってる。井上夢人は「岡嶋二人」の片割れだった人だ。


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