君が護りたい人は




評価:★★★★


 24歳の成富步夏は、20歳年上の奥津雄斗と婚約する。しかし步夏に想いを寄せる三原一樹はそれを許せず、奥津の殺害を決意する。

 犯行の舞台はキャンプ場。そこで三原は幾重にも仕込んだ罠を用意するが、ことごとく失敗し、奥津を殺せない。いったい何が起こっているのか・・・

 碓氷優佳を探偵役とする倒叙推理シリーズ、第6作。

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 登山仲間が集まってつくった「アンクル会」。その会のメンバーだった成富(なるとみ)夫妻が富士登山中の落石事故で亡くなってしまう。後に残されたのは、中学二年生の一人娘・步夏(ほのか)のみ。

 頼れる親類がいない步夏は養護施設に入ることになる。成富夫妻に富士山行きを勧めた奥津雄斗(おくつ・ゆうと)は責任を感じ、会の仲間の弁護士・芳野友晴(よしの・ともはる)の助力もあって步夏の未成年後見人となった。

 10年後。大学を卒業して就職した步夏は、奥津と婚約した。会の仲間たちは祝福したが、步夏に想いを寄せていた三原一樹(みはら・かずき)は、奥津が15歳の步夏と肉体関係をもったことを知り、愕然とする。

 「步夏を奥津の支配から解放しなければならない」
 三原は芳野に奥津への殺意を明かし、見届け人になってほしいと告げる。

 三原が犯行現場に選んだのは、「アンクル会」のメンバーが集まるキャンプ場だった。

三原を止められなかった芳野は、彼の行動を注視し、犯行の直前に妨害することを決意していた・・・


 シリーズ探偵である碓氷優佳(うすい・ゆか)は、今回のキャンプにゲストとして参加している。会のメンバーに彼女の学生時代の友人がいて、誘われたのだ。

 本書は芳野の視点から描かれる。三原を犯罪者にしないために、彼の一挙手一投足に注目し、用意された罠を見破って奥津殺害を阻止する。そのために芳野の頭脳はめまぐるしく回転していく。

 三原の計画は良くできていた。幾重にも準備されており、成功すれば間違いなく奥津は死に至るし、なおかつ絶対に自分に容疑が掛からないようにできている。

 しかしなぜか、奥津は罠に引っかからず、三原の手の内からことごとく抜け出してしまう。そしてその陰には、優佳の存在があった・・・

 読者には、優佳がさりげない行動で確実に三原の計画を潰していることがわかる。彼女のことだから、三原の殺意に気づいてしまったのだろうとの推測も立つ。

 そして物語の3/4を過ぎたあたりで、ストーリーは急展開を迎えることになるのだが、ここまでの流れは、この手の話では順当な幕切れともいえるだろう。

 しかし最終章に入ると、さらにもう一段のヒネりが待っている。詳しく書くとネタバレになるが、碓氷優佳さんとはこのようなキャラだったなぁと、改めて思い出させるエンディングだ。
 そしてタイトルがまた秀逸だ。読み始めた時と読み終わった時では意味合いが変わっていることがわかる。どう変わるのかは、読んでのお楽しみだ。


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