地獄の門



地獄の門 上 (竹書房文庫)

地獄の門 上 (竹書房文庫)



  • 出版社/メーカー: 竹書房

  • 発売日: 2017/12/08







地獄の門 下 (竹書房文庫)

地獄の門 下 (竹書房文庫)



  • 出版社/メーカー: 竹書房

  • 発売日: 2017/12/08









評価:★★★





 第二次世界大戦末期の1944年。アマゾンの奥地・"地獄の門" で、ナチス・ドイツと日本軍が何かを企んでいるらしいとの情報が入る。動物学者でアメリカ陸軍大尉でもあるマックレディは "地獄の門" への潜入を命じられるのだが・・・



* * * * * * * * * *



 「プロローグ」は1944年2月。ウクライナの戦場で、ソビエト連邦の赤軍が謎の飛行物体から散布された謎の兵器によって全滅する様子が描かれる。



 そして本編に入ると時間軸が一ヶ月巻戻され、1944年1月の南米・アマゾンが舞台となる。

 動物学者でアメリカ陸軍大尉でもあるマックレディは、上官に呼び出され、新たな任務を命じられる。アマゾンで日本軍の潜水艦が発見されたという。川を遡上中に座礁したものと思われた。



 これがなんと伊400型。全長122mという当時最大の潜水艦だ。発見された時は積荷も含めてもぬけの殻で、どんな人間が何を運んでいたのかは不明。

 彼らの目的地は川の上流にある "地獄の門" と呼ばれる地と思われた。切り立った断崖に囲まれた谷で、一年中深い霧に覆われており、航空機からの偵察を阻んでいる。

 三週間前に送り込んだレンジャー部隊は消息を絶った。おそらく全滅したのだろう。



 マックレディに与えられた任務は、単身 "地獄の門" へ潜入し、潜水艦を送り込んだ者たちの意図を確かめること。

 マックレディはアマゾンに暮らす親友にして植物学者スローンとその妻の助けを受け、現地へと向かうのだが・・・





 「プロローグ」の内容から、"地獄の門" で行われているのは飛行物体と新兵器の開発と見当がつく。

 実際、現地に入り込んでいたのはナチス親衛隊。彼らの目的は有人ロケット兵器の開発だ。そして彼らに協力しているのが日本人微生物学者の木村。悪名高き「731部隊」の石井四郎中将の指導を受けていたという設定で、要するに生物兵器の開発を行っている(”731部隊”・”石井四郎” について分からない人はググってください)。

 つまり、アメリカの首都ワシントンに細菌兵器をばら撒こうとしているのだ。





 ・・・と書いてくると、マックレディが枢軸国側の秘密開発基地を破壊してめでたしめでたし、という話かと思われるだろう。

 そして舞台が秘境なので「インディ・ジョーンズ+007」みたいなアクションものかな、って私も勝手に思っていた。



 でも、読み始めてかなり早い段階で「ちょっと違う」と感じ始めるだろう。それは "第三勢力" が登場してくること。そしてそれは人間ではない。”生物” なのだが、”彼ら” は高度な知能のみならず、ある "特殊な能力" をも併せ持つ、なんとも厄介で凶暴な存在なのだ。

 ・・・ってボカして書いてるんだけど、実は文庫の表紙イラストで思いっきりネタバレしてるのは如何なものかと思う(笑)。



 基本的には ナチス+日本軍 の野望を打ち砕こうとするマックレディの物語なのだが、そこに "彼ら" が絡むことで「スカッとするアクションもの」から「予想外にホラーな作品」へと変化していく。それに加えて、ジャングルに棲息する危険な生き物などの襲撃がてんこ盛りなど、私にとってはちょっと苦手なシーンも多い。



 というわけで、私の期待していた物語とはかなり違っていたのだが、本国アメリカでは好評だったらしく、マックレディを主役としてシリーズ化されているとのこと。

 そういう目で見ると、次作につながる要素もいくつかある。でも邦訳は出ていなさそう(笑)。



 アマゾンの奥地でナチスと日本軍が協力して新兵器開発、というかなり荒唐無稽な話なのだが、巻末に「真偽の確認」という文章が載っていて、どこまでが事実でどこからがフィクションか、というのが文庫で20ページ近くを充てて詳細に書かれている。

 これを読むと、大きな嘘を支えるためには、細かい事実をかなり積み重ねて固めてあるのがよくわかる。





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