復讐は合法的に



復讐は合法的に (宝島社文庫)

復讐は合法的に (宝島社文庫)



  • 作者: 三日市零

  • 出版社/メーカー: 宝島社

  • 発売日: 2023/07/06









評価:★★★☆





 卓越した美貌を誇るエリスは、弁護士資格を持ちながらも探偵事務所を経営し、様々な悩みやトラブルを依頼人に代わって解決する。

 それは、法に触れないギリギリのラインで、"相手" に対して最大限のダメージを与えていく ”復讐” だ。

 そんなエリスの活躍を四編収めた短編集。



 第21回「このミステリーがすごい!」大賞候補作。



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 往年のTVドラマ『必殺』シリーズや『ザ・ハングマン』と同様に、"晴らせぬ恨みを晴らします" がコンセプトのミステリー。

 異なるのは、主人公エリスが弁護士資格を持ち、手法もあくまでも合法的(グレーゾーンに入る場合もあるが)であること。

 しかし、「合法的な方法」イコール「道徳的な方法」とは限らないところがミソだ。





「Case 1 女神の負け犬」

 OLの中西麻友(なかにし・まゆ)は6年間つき合っていた彼氏・坂口俊介(さかぐち・しゅんすけ)から別れを告げられた。さんざん尽くしたあげく、結婚のために麻友が貯めた金まで使われてしまう。

 傷心を抱えて街を歩いていた麻友は、美貌の麗人・エリスと出会う。麻友の話を聞いたエリスが提案したのは、坂口の社会的な信用を公私ともに徹底的に失墜させる作戦だった・・・





「Case 2 副業 サイドビジネス」

 携帯ショップの副店長を務める "俺" は、業務の裏でこっそりと "悪事"(内容は明かされない)を働いていた。

 一方、エリスの元を依頼人・重田靖(しげた・やすし)が訪れる。彼の息子・晴臣(はるおみ)が人を殺した容疑で逮捕されたが、それは "嵌められた" のだという。

 被害者は "俺" が勤務する携帯ショップの顧客だったことから、二つのストーリーがつながっていく・・・ 

 「合法的な方法」イコール「道徳的な方法」とは限らないことを実感させるエンディングだ。

 本作から、エリスの高校時代の同級生で警視庁捜査一課の刑事・富澤拳(とみざわ・けん)がレギュラーメンバーとして登場する。





「Case 3 潜入」

 今回のエリスへの依頼者は雑誌記者の灰島涼斗(はいじま・りょうと)。内容は早乙女創真(さおとめ・そうま)という男が小児強制わいせつ事件の犯人である証拠を手に入れること。

 彼は子ども向け英会話教室の講師をしながら "獲物" を見繕い、毒牙にかけてきた。しかし父親が国会議員であることから、取材には悉く悪質な妨害が入ってきていた。

 自ら動こうとするエリスを止めたのは秘書のメープル。彼女自身が英会話教室の生徒として潜入するという。

 メープルは本名・佐藤楓(さとう・かえで)という小学四年生(!)の少女。ちなみに、エリスとの関係やなぜ彼女が秘書をしているのかは本書の中では明かされない。なお、小学生を働かせることは違法なのだが、エリスはなんとも人を食った方法でこれを "合法化" している。

 そして、潜入したメープルが早乙女の "性癖" の証拠を突き止める・・・という展開かと思いきや、意外なひねりが炸裂する。





「Case 4 同類」

 薗田琴子(そのだ・ことこ)の娘・美海(みなみ)は、ミスコンで優勝した美人女子大生だった。ところが暴露系アカウント・味亭太(あじていた)の投稿が元で誹謗中傷が殺到して炎上、ついには路上で撲殺されてしまう。

 犯人は逮捕されたが、元凶となった味亭太はそのままだ。琴子はその正体を突き止めてほしい、とエリスに依頼してきた。

 富澤から協力を受け、味亭太の "候補" は三名に絞られたのだが・・・

 ラストでその正体に迫る推理はよくできてるけど、東京在住か在勤でないとピンとこないかも。





 四作それぞれ異なったパターンを使っているなど、作者の引き出しの多さを感じる。

 続編『復讐は芸術的に』も既に刊行されていて、今読んでいるところ。





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