十一人の賊軍




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 まずはあらすじから。

 本作の舞台となった新潟県新発田市を紹介した「しばた街めぐり」というサイトの中に、この映画の紹介が載っている。これがよくまとまっているので、そこから引用する。





* * * * * * * * * * ここから引用



 新潟の新発田(しばた)藩家老・溝口内匠(みぞぐち・たくみ)は進退窮まっていた。

 日本は二つに分裂し、戊辰戦争が勃発。「新しい時代を切り開く!」という強い使命感を掲げ進軍を続ける新政府派「官軍」によって、旧幕府軍は徐々に東国へと追い詰められていた。



 密かに新政府軍への寝返りを画策する新発田藩の目の前には、遂に官軍の到着が迫っていた…そんな折に、旧幕府派の奥羽越列藩同盟軍が出兵を求め新発田城へ軍を率いて押しかける!

 城から退かない同盟軍と迫りくる新政府軍が鉢合わせてしまっては、新発田は戦火を免れない!まさに絶体絶命!



 一刻の猶予も無い溝口内匠は一計を案じ、官軍の進撃を食い止める起死回生の一手として【砦の護衛作戦】を命じる。

 集められたのは、殺人、賭博、火附け、密航、姦通...などで収監された、死罪になるべき人道を外れた十一人の罪人たち。

 圧倒的不利な命懸けの過酷ミッションとは、【新政府軍が砦へ侵攻するのを防ぐこと】ただそれだけ。



 死を覚悟していた彼らに見えた、「生きる」という一筋の希望。勝てば “無罪放免” という契りを信じ、罪人たちは己のために突き進む。

 果たして、彼らは未来を掴み取ることができるのか!?



 新発田藩、同盟軍、新政府軍…三者の思惑が交錯するなか、それぞれの執念が轟く、十一人の壮絶な戦いがいま始まる!



* * * * * * * * * *  引用ここまで





 ちょっと補足しておくと、【砦】とは官軍が新発田藩へ侵攻するルート上にある小さなものだ。

 溝口内匠が考えた策は、その【砦】で官軍を足止めし、その間に奥羽越列藩同盟軍に新発田藩から出て行ってもらうこと。その後、官軍を迎え入れれば新政府へと無事に鞍替えすることができる。

 しかし、【砦】に割ける兵員が足らず、罪人を使うことにしたわけだ。しかしそこには、もう一つの思惑もあったのだが・・・





 主人公は罪人の一人、駕籠かきの政(まさ)[山田孝之]。妻を手込めにした侍をたたき殺したことで死罪となった。他の罪人には、

 いかさま博徒の ”赤丹”(あかたん)[尾上右近]、

 火付けをした女郎・なつ[鞘師里保]、

 花火師の息子・ノロ[佐久本宝]、

 檀家の娘を手込めにしたエロ坊主の ”引導”(いんどう)[千原せいじ]、

 医師の倅でロシアへの密航を企てた ”おろしや” [岡山天音]、

 一家心中の生き残りの ”三途”(さんず)[松浦祐也]、

 侍の女房と恋仲になって姦通罪となった ”二枚目”[一ノ瀬颯]、

 無差別殺害犯の ”辻斬”(つじぎり)[小柳亮太]、

 外見はヨボヨボだが意外に凄腕の ”爺っつぁん”(じっつぁん)[本山力]。



 以上、罪人は総勢十人。タイトルには「十一人」とあるのだけど、ここの意味は作中で明かされる。

 彼らは「砦の死守に成功すれば無罪放免」という約束の下に、決死隊に加わる(加わらざるを得ない)ことになる。



 この罪人たちを指揮する侍たちには

  剣術道場の道場主で直心影流の使い手・鷲尾兵士郎(わしお・へいしろう)[仲野太賀]、彼は本作では政と並んでのダブル主役を務める。

 そして家老・溝口内匠の腹心で、その娘・加奈の婚約者でもある入江数馬(いりえ・かずま)[野村周平]。



 すべてを画策した溝口内匠を演じるのは阿部サダヲ。

 罪人たちに対して非情ともいえる決断を下すのだが、すべては藩の安寧、民が戦渦に巻き込まれないことを最優先するが故のこと。

 しかし、だからといって罪人たちへの ”裏切り” が許されるわけではない。





 あっという間に落ちてしまうかと思われた【砦】だったが、意外と持ちこたえてみせる。鷲尾や ”辻斬” など、ある程度は剣を使える者がいたのもあるが、中でも ”爺っつぁん” の豪腕ぶりは特筆もの。彼の正体はラスト近くで明かされるのだが、その勇猛ぶりも納得の出自だ。

 また、戦闘には不向きと思われた罪人たちの中にも意外な才能を発揮する者がいて、官軍を苦しめていく。



 「無罪放免」を信じて戦いに身を投じる罪人たち、藩命に従って命をかける侍たち。彼らの壮絶な戦いが延々と描かれていく。

 しかし所詮は多勢に無勢、じりじりと情勢は悪化し、櫛の歯が欠けるように彼らの命は散っていく・・・





 TVドラマから時代劇が消えて久しいが、映画ではここのところ、定期的に作品が作られるようになってきた。

 だが本作で描かれるのは、「水戸黄門」や「暴れん坊将軍」みたいな ”きれいな” 時代劇ではない。切られれば血しぶきがほとばしり、腕がちぎれ首が飛ぶ。そんな、血なまぐさい殺陣が続く。





 Wikipediaによると、本作は脚本家・笠原和夫が1964年に執筆した「十一人の賊軍」のプロットが原案。彼の脚本は賊軍が最後に全員死んでしまう結末で、当時の東映上層部の意にそぐわずに却下され、企画は打ち切りになったという。



 本作では、監督の白石は笠原の原案のラストを改変しており、生存者がいる。まあ当時とは価値観も異なり、観客の求めるものも変わってきているのでこれは妥当だろう。







十一人の賊軍 (講談社文庫)

十一人の賊軍 (講談社文庫)



  • 作者: 冲方丁

  • 出版社/メーカー: 講談社

  • 発売日: 2024/07/12







 人気作家・冲方丁によるノベライズ。

 おおむね映画のストーリーに沿っているが、ラストがやや異なる。

 生存者の人数は変わらないが、そのメンバーが異なるのだ。

 映画のラストとノベライズのラスト、好みは分かれるとも思うが、私はノベライズ版の方が映画版よりは ”救い” がちょっぴり多く感じられるので、こちらの方が好きだ。


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