ネットの評価を見ると、今ひとつな数字が挙がってて、中にはけっこう厳しいことを書いてる人もいる。
だけど、かみさんが三谷幸喜のファンで「観に行きたい」って言うので、不安はあったのだけど映画館に足を運んだ。
結論から言うと、「そんなにひどくはなかったよ」
双手を挙げての ”大傑作” だとは思わないけど、114分間それなりに楽しんだし、時間や金を無駄にしたとは感じなかったから。
期待値のハードルを上げすぎた状態で観に行くと、ちょっとアテが外れるかも知れないけど(笑)。
それではあらすじから。
TOHOシネマズのサイトにあった紹介文を、編集したものを掲げる。
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その日、刑事・草野[西島秀俊]が訪れたのは著名な詩人・寒川[板東彌十郎]の豪邸。≪スオミ≫[長澤まさみ]が昨日から行方不明だという。スオミとは寒川の妻で、そして草野の元妻。
草野は、すぐに正式な捜査を開始すべきだと主張するが、寒川は「大ごとにするな」と言って聞かない。やがて屋敷に続々と集まってくる、スオミの過去を知る男たち。
スオミの最初の夫で元教師の魚山(ととやま)[遠藤憲一]、二番目の夫で怪しげな YouTuber の十勝[松坂桃李]、三番目の夫で警察官の宇賀神[小林隆]。
ちなみに草野は四番目の夫、寒川は五番目にして現在の夫だ。
誰が一番スオミを愛していたのか。誰が一番スオミに愛されていたのか。
スオミの安否そっちのけで、男たちは熱く語り合う。だが不思議なことに、彼らの思い出の中のスオミは、見た目も、性格も、まるで別人・・・。
スオミはどこへ消えたのか。スオミとは一体、何者なのか。
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記事の冒頭にも書いたけど、三谷幸喜作品なので大爆笑できるだろうって期待しすぎると、ちょっと肩透かしを食うかも。
ストーリーのほとんどが寒川の屋敷の中で進行したり、開幕早々に広間のシーンでとてつもなく長回しのワンカットがあったりと、舞台劇ふうの画面作り。
このへんも好みが分かれるかな。好きな人にはたまらないかも知れないが、合わない人には退屈に思えるかも知れない。
物語の設定がちょっと複雑なので、それが頭に入るまでの序盤はちょっと笑う余裕がないだろう。でも芸達者な役者さんばかりなので、中盤以降の流れに乗れればけっこう楽しく観られる(と思う)。
スオミの失踪が誘拐であることが判明し、後半は三谷幸喜お得意のミステリー・タッチになるが、コメディである基本は揺るがない。
私が観た回では、爆笑とまではいかなかったけど、後半ではけっこうクスクス笑いが起こってたよ。
登場する役者さんについて個別に書いていたら大変なので、4人に絞る。
まず序盤では、板東彌十郎演じる詩人の設定が面白い。
詩人と言えば「赤貧洗うがごとし」というイメージがあるが、彼は著作がことごとくベストセラーになっているようで、豪邸に暮らし、金庫には億単位の現金が入っている。それでいて極めてケチな守銭奴で、他人に対する態度も傲岸不遜そのもの。そんなイヤな奴なのに、人の心を打つ詩を書く。
まあ、仕事上の能力と人間性に相関はないからなぁ・・・とか、昔の同僚や上司を思い出してしまったよ(笑)。
5人の夫の前で、それぞれキャラを切り替えてみせる長澤まさみの上手さには驚かされた。さながら多重人格みたい。それも、ワンカットの中で5つの人格をすべて演じ分けてみせる。ここまでできる女優さんは稀ではないかな。
教師役の遠藤と三者面談に臨むシーンでは、中学生のスオミとその母親役を(もちろん合成なのだが)同一画面の中で演じ分ける。ここまで来ると天晴れとしか言い様がない(流石に中学生役は無理があったかな。せめて高校生にしてあげて)。
そして、スオミとともに現れる謎の女・薊(あざみ)を演じる宮澤エマもスゴかった。彼女もまたスオミ同様、いくつもの人格を演じ分けてみせる。
映画の宣伝では長澤まさみの演技ばかり紹介されてるみたいだが、どっこい宮澤エマの演技はそれに勝るとも劣らない。もっと評価されていい女優さんだ。
そして草野の部下・小磯を演じたのは瀬戸康史。『鎌倉殿の13人』でも、愛嬌たっぷりのお惚けキャラを演じてたが、本作でのコミカルな演技には凄い進歩を感じた。彼を主役にした喜劇映画を観てみたくなったよ。
ラストはメインキャラたち総登場のダンスシーンになる。
「ここ、必要なのかな?」という思いも頭の中をよぎるが(おいおい)、みんな一所懸命に踊ってるので観てあげましょう(笑)。
とくにオジサンたちは、練習が大変だったと推察する。お疲れ様でした。
そしてここでは、長澤まさみの歌を聴くことができる。これがまた素晴らしく上手い。なんともたいした役者さんになりましたねぇ。
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