地面師たちの戦争 帯広強奪戦線



地面師たちの戦争 帯広強奪戦線 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

地面師たちの戦争 帯広強奪戦線 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)



  • 作者: 亀野 仁

  • 出版社/メーカー: 宝島社

  • 発売日: 2023/11/07

  • メディア: 文庫








評価:★★★





 元自衛官だった橘は、いまは土地取引専門の詐欺グループのメンバー。架空の土地売買で4000万円を手に入れるも、仲間を殺され、金は奪い去られる。

 しかもその直後から、謎の中国人たちの追撃を受けるようになる。彼らはなぜ襲ってくるのか、そして奪われた金はどこに消えたのか・・・



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 元自衛官の橘一路(たちばな・かずみち)は、北海道を根城にした地面師(土地売買専門の詐欺師)グループの一員として活動している。



 市役所職員という表の顔を持つ中沢優希(なかざわ・ゆうき)は27歳の女性、隠れ蓑の不動産会社を営む60代の日下部(くさかべ)、若手の小山田(おやまだ)、そしていかにも銀行員のような外見の速見は51歳。この四人が仲間だ。



 地主役として雇った船越を加え、架空の土地売買で相手から4000万円の現金を騙し取ることに成功した橘たち。

 しかしその直後、日下部が殺されて現金が奪われてしまう。



 現金の行方を追い始めた橘と優希に、こんどは謎の中国人たちが襲撃を賭けてくる・・・





 主役となる橘は、ある "疾病" が原因で自衛隊を辞することになった。なんでこんな設定を彼に付け加えたんだろう、って思ってたんだが、終盤近くになってしっかり "効いてくる" ので、作者の仕込みが上手かったといえるだろう。



 ヒロインとなる優希さん。なんで堅い職業に就いていながら犯罪に手を染めたのか。そこには深刻で過酷な状況がある。これは誰にでも起こりうる "未来" かも知れない。



 一見して堅気にみえる速見だが、犯罪もビジネスと割り切って "きっちり労働する" ことを自分に課しているあたり、なかなかユニークな人であると同時に、いちばん怖い人でもある。



 本書の冒頭部は香港を舞台に、今回の敵となる中国人グループが結成されるまでのエピソード。ここは意外と面白かった。



 ラストでは消えた4000万円の行方も判明し、登場人物の一人の手に落ちるのだけど、所詮は ”あぶく銭”。ろくでもない末路を迎えるような気がするのは、私だけではあるまい。





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