評価:★★★
元自衛官だった橘は、いまは土地取引専門の詐欺グループのメンバー。架空の土地売買で4000万円を手に入れるも、仲間を殺され、金は奪い去られる。
しかもその直後から、謎の中国人たちの追撃を受けるようになる。彼らはなぜ襲ってくるのか、そして奪われた金はどこに消えたのか・・・
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元自衛官の橘一路(たちばな・かずみち)は、北海道を根城にした地面師(土地売買専門の詐欺師)グループの一員として活動している。
市役所職員という表の顔を持つ中沢優希(なかざわ・ゆうき)は27歳の女性、隠れ蓑の不動産会社を営む60代の日下部(くさかべ)、若手の小山田(おやまだ)、そしていかにも銀行員のような外見の速見は51歳。この四人が仲間だ。
地主役として雇った船越を加え、架空の土地売買で相手から4000万円の現金を騙し取ることに成功した橘たち。
しかしその直後、日下部が殺されて現金が奪われてしまう。
現金の行方を追い始めた橘と優希に、こんどは謎の中国人たちが襲撃を賭けてくる・・・
主役となる橘は、ある "疾病" が原因で自衛隊を辞することになった。なんでこんな設定を彼に付け加えたんだろう、って思ってたんだが、終盤近くになってしっかり "効いてくる" ので、作者の仕込みが上手かったといえるだろう。
ヒロインとなる優希さん。なんで堅い職業に就いていながら犯罪に手を染めたのか。そこには深刻で過酷な状況がある。これは誰にでも起こりうる "未来" かも知れない。
一見して堅気にみえる速見だが、犯罪もビジネスと割り切って "きっちり労働する" ことを自分に課しているあたり、なかなかユニークな人であると同時に、いちばん怖い人でもある。
本書の冒頭部は香港を舞台に、今回の敵となる中国人グループが結成されるまでのエピソード。ここは意外と面白かった。
ラストでは消えた4000万円の行方も判明し、登場人物の一人の手に落ちるのだけど、所詮は ”あぶく銭”。ろくでもない末路を迎えるような気がするのは、私だけではあるまい。
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