密漁海域 1991根室中間線



密漁海域 1991根室中間線 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

密漁海域 1991根室中間線 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)



  • 作者: 亀野 仁

  • 出版社/メーカー: 宝島社

  • 発売日: 2022/12/05

  • メディア: 文庫








評価:★★★





 1991年、元海上保安士の宮島咲月は、北海道・羅臼で "特攻船" (北方領土近海で違法操業をする漁船)に乗り込むことになった。

 その頃、日本漁船を攻撃して乗組員を殺害、漁獲物を強奪していく謎の攻撃船 "海魔" が出現していた。そして咲月の周囲にも謎の襲撃者が。

 これは海魔と関係があるのか? そして海魔の目的、そして正体とは・・・



* * * * * * * * * *



 北朝鮮の密漁船を臨検中、誤って同僚を死なせてしまった宮島咲月(みやじま・さつき)。海上保安庁を退職した彼女は、北海道の羅臼(らうす)で "特攻船" に乗ることになった。それは、地元のヤクザが乗り込み、ソ連近海で違法操業をする漁船のことだ。



 彼女を誘ったのは地元ヤクザの幹部・歳桃(さいとう)。昭和の映画に出てくるような、義理人情に厚い、昔気質の親分肌の男だ(彼が辿ってきた過去も作中で明かされる)。



 咲月の乗り込んだ特攻船は順調に "漁獲量" を稼いでいくが、その頃、日本漁船を攻撃して乗組員を殺害、漁獲物を強奪していく謎の攻撃船 "海魔" が現れるようになっていた。



 生存者の証言によると、"海魔" の乗員には「大柄な白人」がいたという。そして、"漁" を終えて帰港した咲月の前にも二人組の白人が現れた。辛うじて彼らの襲撃を逃れた咲月だったが、今度は歳桃が襲われてしまう・・・





 運命に翻弄されて、仲間を喪い、職を失い、家族からも疎まれ、流れ落ちた先で拾ってくれた恩人さえも救えなかった咲月。後半はそんな彼女の反撃が描かれる。



 "海魔" の脅威に対抗すべく、漁船員たちは "自警団" を組織、その自警船の一隻に乗り込んだ咲月が "海魔" と繰り広げる、壮烈な銃撃戦がクライマッスとなる。



 そして最期に明かされるのは、"海魔" の意外な目的と、その正体。



 冒険小説のフォーマット通りに、宮島咲月という女性の半生が描かれていく。





 主な舞台となるのは知床半島の羅臼、そして網走。

 道東には三回ほど旅行に行ったことがある。一回目は大学時代の友人と、二回目はかみさんと、三回目は家族で。二度目の時には知床半島を横断する国道の途中で、エゾシカに出会ったのもいい思い出だ。

 観光地というイメージしかなかったけど、本書ではそこで暮らす人々の様子も描かれ、ちょっと修正されたように思う。

 あと、作品の背景になっている1991年頃は、北海道の東の果てのほうにもバブルの波が押し寄せていたらしい。これも驚いたことの一つ。



 第一作「暗黒自治区」と比べると、ウエットな描写は増えたけどアクションは減ったかな。

 どちらがいいかは人によると思うけど、私は前作のほうが好きかなぁ。





この記事へのコメント