評価:★★★
1991年、元海上保安士の宮島咲月は、北海道・羅臼で "特攻船" (北方領土近海で違法操業をする漁船)に乗り込むことになった。
その頃、日本漁船を攻撃して乗組員を殺害、漁獲物を強奪していく謎の攻撃船 "海魔" が出現していた。そして咲月の周囲にも謎の襲撃者が。
これは海魔と関係があるのか? そして海魔の目的、そして正体とは・・・
* * * * * * * * * *
北朝鮮の密漁船を臨検中、誤って同僚を死なせてしまった宮島咲月(みやじま・さつき)。海上保安庁を退職した彼女は、北海道の羅臼(らうす)で "特攻船" に乗ることになった。それは、地元のヤクザが乗り込み、ソ連近海で違法操業をする漁船のことだ。
彼女を誘ったのは地元ヤクザの幹部・歳桃(さいとう)。昭和の映画に出てくるような、義理人情に厚い、昔気質の親分肌の男だ(彼が辿ってきた過去も作中で明かされる)。
咲月の乗り込んだ特攻船は順調に "漁獲量" を稼いでいくが、その頃、日本漁船を攻撃して乗組員を殺害、漁獲物を強奪していく謎の攻撃船 "海魔" が現れるようになっていた。
生存者の証言によると、"海魔" の乗員には「大柄な白人」がいたという。そして、"漁" を終えて帰港した咲月の前にも二人組の白人が現れた。辛うじて彼らの襲撃を逃れた咲月だったが、今度は歳桃が襲われてしまう・・・
運命に翻弄されて、仲間を喪い、職を失い、家族からも疎まれ、流れ落ちた先で拾ってくれた恩人さえも救えなかった咲月。後半はそんな彼女の反撃が描かれる。
"海魔" の脅威に対抗すべく、漁船員たちは "自警団" を組織、その自警船の一隻に乗り込んだ咲月が "海魔" と繰り広げる、壮烈な銃撃戦がクライマッスとなる。
そして最期に明かされるのは、"海魔" の意外な目的と、その正体。
冒険小説のフォーマット通りに、宮島咲月という女性の半生が描かれていく。
主な舞台となるのは知床半島の羅臼、そして網走。
道東には三回ほど旅行に行ったことがある。一回目は大学時代の友人と、二回目はかみさんと、三回目は家族で。二度目の時には知床半島を横断する国道の途中で、エゾシカに出会ったのもいい思い出だ。
観光地というイメージしかなかったけど、本書ではそこで暮らす人々の様子も描かれ、ちょっと修正されたように思う。
あと、作品の背景になっている1991年頃は、北海道の東の果てのほうにもバブルの波が押し寄せていたらしい。これも驚いたことの一つ。
第一作「暗黒自治区」と比べると、ウエットな描写は増えたけどアクションは減ったかな。
どちらがいいかは人によると思うけど、私は前作のほうが好きかなぁ。
この記事へのコメント