映画『朽ちないサクラ』





 三連休の中日(7/14)、諸般の事情でポカっと時間が空いてしまいました。

 家でぼーっとしているのも芸がなかろう、というわけで映画を観ようと出かけました。



 この映画、もともと観る予定に入っていなかったのですが、他に候補に挙がった映画は、上映時間が合わなかったり、上映館が遠かったり。

 だからこの作品は消去法で選びました(失礼!)。まあサスペンス・ミステリーと銘打ってあるのでよかろう、と。

 柚木裕子さんの原作小説の映画化なのですが、当然ながら未読の状態で臨みました。


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 ではまず、あらすじから。公式サイトの「STORY」をベースに、若干編集してあります。



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 「疑いは絶対に晴らすから」

 そう言って立ち去った親友は一週間後に変死体で発見された



 愛知県平井市在住の女子大生が、度重なるストーカー被害の末に、神社の長男に殺害された。のちに、平井中央署生活安全課が女子大生からの被害届の受理を先延ばしにし、その間に慰安旅行に行っていたことが地元の米崎新聞に独占スクープされる。



 県警広報広聴課の森口泉(杉咲花)は、親友の新聞記者・津村千佳(森田憩)が約束を破って記事にしたのではないかと疑い、千佳は身の潔白を証明するために調査を開始し、1週間後に変死体で発兄される。



 自分が疑ったから、千佳は何者かに殺されたに違いない一一。



 自責と後悔の念に突き動かされた泉は、親友の弔い合戦に身を投じる。そして彼女は、ストーカー殺人と警察の不祥事に、かつて大事件を起こしたカルト宗教団体が絡んでいることを知り・・・



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 以下は感想。

 ネタバレに類する内容もあるので、未見の方はご注意を。





 まず第一印象は「地味な映画だなぁ」ということ。主役の泉がいろんな登場人物と対峙し、会話していくのが延々と綴られていく、という印象です。



 親友を疑い、その親友が殺害された後は自責の念に苛まれ、自ら真相究明に動き出す。行政職員の泉には捜査権がない。協力するのは警察学校の同期だった生活安全課の磯川(萩原利久)のみ。

 しかし彼女のひたむきさは、直属の上司である広報広聴課課長・富樫(安田顕)と捜査一課係長・梶山(豊原功補)を動かし、事件の核心へと迫っていく。



 終盤のカーチェイスを除き、全編ほぼ会話のシーンが続きます。TVの二時間ドラマだってもう少し派手なシーンがあるんじゃないかなぁとも思いました。

 ただ、そのぶん丁寧に作ってあるとも云えます。観客を飽きさせないため、短時間にイベントをたくさん詰め込んで密度を上げる映画も多い中、本作は真逆とも云える演出で、かえって印象的に見えるかも知れません。

 また、その会話劇を支える俳優さんたちがみな達者で、会話シーンだけで充分に尺が持ってしまうのもスゴい。

 本作の上映時間は119分。サクサク語ることに徹すれば90~100分くらいに充分収まるようにも思えますが、製作陣はあえてこの長さにしたのでしょう。



 ただ、ストーリー的にはどうか。

 公安とカルト宗教が出てきた時点で、ある程度ミステリを読み慣れた人にはオチが見えてしまうように思います。

 公安警察は上(国家)を向き、刑事警察は下(市民)に視線を向けています。目的が異なる以上、目指す正義も異なります。どちらかが間違っているということはなく、どちらも正しいとは思います。

 ただ、公安警察の捜査が一般人の価値基準からかなり離れているのは事実でしょう。そのへんを差し引いても、本作での公安の、”いかにもな黒幕” 的な描かれ方にはちょっと違和感を感じました。あれではカルト教団以上の暗殺組織じゃないですか。

 まあフィクションですから、悪役を設定しなければいけません。現代日本では公安は悪役にしやすい組織ではあるでしょう。



 ヒロイン・森口泉は事件を通じて「警察とは何か」「正義とは何か」を考え始め、本作のラストでは自分なりの答えを求めて警察官への転身を決意します。

 本作は泉の成長の物語としてはとてもよくできていて、杉咲花さんはそれにぴったりだったと思います。

 原作小説では既に続編『月下のサクラ』が刊行されていて、刑事となって機動分析係へと配属されたた泉の物語が描かれているようです。

 うーん、読もうかなぁ・・・どうしようかなぁ・・・



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