変な家



変な家 文庫版

変な家 文庫版



  • 作者: 雨穴

  • 出版社/メーカー: 飛鳥新社

  • 発売日: 2024/01/31









評価:★★★





 オカルト系ライターである筆者は、都内の一戸建てを購入しようとしている知人から相談を受ける。その家の間取り図に、「謎の空間」が存在しているのだという。

 筆者は知人の設計士・栗原とともに、間取り図の謎について検討を始めるのだが・・・



 2023年に最も売れた本らしい(80万部超えとか)。映画化もされた話題の小説。



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「第一章 変な家」



 オカルト専門のフリーライターをしている筆者は、友人の柳岡(やなおか)から相談を受ける。都内の中古住宅を購入しようとしているのだが、その家の間取り図に「謎の空間」が存在しているのだという。



 筆者は知人の設計士・栗原(くりはら)とともに、その家の間取り図について検討を始めると、異常な点がいくつも見つかる。



(1)1Fの間取りに「謎の空間」(四方を壁に囲まれ、出入り口のない空間)が存在している。

(2)2Fにある子供部屋には、[1]窓がない。[2]ドアが二重になっている。[3]専用のトイレがある。

(3)2Fには、シャワー室と浴室が、離れた位置に別れて存在する。



 筆者と栗原は、ある推測に到達する。この家には ”ある目的” のために造られた "秘密の通路" が存在するのではないか、と。「謎の空間」はその一部なのではないか。



 しかし柳岡がこの家の購入を中止してしまったので、検討はここまでになってしまう。その後、この家に関係すると思われる遺体の発見を伝えてこの章は幕となる。





「第二章 いびつな間取り」



 「第一章」で関わった家のことを記事に書いた筆者に、読者からメールが届く。そのひとりである宮江柚希(みやえ・ゆずき)という女性に会った筆者は、驚くべきことを聞かされる。

 あの記事にあった家で、柚希の夫が殺されたかも知れない、というのだ・・・



 そして彼女は、もう一軒の家の間取り図を示す。それは、"あの家の住人が、かつて住んでいた" 家のもの。そして住人の姓は片淵(かたぶち)。

 そこには、"あの家" の間取りと共通する "異様さ" があった・・・





 そして「第三章 記憶の中の間取り」では、片淵家の実家が登場し、そこでも奇怪な事件が起こっていたことが描かれる、

 最終章である「第四章 縛られた家」では、片淵家の過去が明らかになり、その異様な家族内の愛憎の模様が語られる。常軌を逸したその関係は、もはやホラーだ。





 現代のミステリで "秘密の通路" なんてものを持ち出した日には、おそらく非難囂々だろう。しかし本書は "秘密の通路が存在する家" を、どーんと真っ正面から提示してみせる。まさに発想の転換といえるだろう。



 家の中に秘密の通路がある → なぜそんなモノを作った → それには目的があったはず → それは良からぬことだろう・・・というわけで、この家の由来、建てた者たちのルーツを探っていくことになる。



 この手の小説では、間取りについての記述があるたびに、それが載っているページに戻らなければならないのだけど、そのあたりも本書は斬新だ。

 そのページの記述に沿って、間取り図が多数のページにわたって掲載(同じ図面が何度も載ることもある)され、さらには注目してほしい部分の拡大図も随時載っている。

 文章の量は減ってしまうのだが、いちいちページを見返す必要がないので、読書中の意識が途切れずに清む。読みやすさを最優先したレイアウトだと言えるだろう。



 もっとも、同じ図が頻出するのを鬱陶しいと感じる人もいるかも知れないが。マンガや映像に浸っている現代人には受け入れられるんじゃないかな。実際、ベストセラーになってるみたいだし。



 ただ、肝心のストーリーについては、中盤過ぎまでの "間取り図を読み取る" 部分までは、けっこう面白く読めたけど、終盤のホラー展開はちょっと私の好みとは合わないかな・・・



 作者はミステリ的な手法も駆使できる人のようなので、これからもちょっと気に掛けておきたい人だ。





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