評価:★★★
カソリックの総本山、バチカン市国。
そこには、世界中から寄せられてくる "奇跡" 発見の報に対してその真偽を判別する調査機関『聖徒の座』がある。
そこに所属する天才科学者の平賀と、その相棒で古文書の解析と暗号解読の達人・ロベルト。「奇跡調査官」である神父二人の活躍を描く第24弾。
長編としては18作めになる。
スペインの小村にある教会には、聖ビセンテに纏わる聖剣が祀られている。その聖剣が発する "預言" を聞いたという者が現れる。その預言は数々の出来事を的中させ、バチカンへ奇跡認定の申請がなされた。
平賀とロベルトは現地へ調査に向かうのだが・・・
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スペイン・バレンシア地方にあるプエプロデ・モンタナ村。そこにあるサン・ビセンテ・エスパダ教会にはスペインの聖人・聖ビセンテに纏わる聖剣が祀られている。
村では200年ほど前から奇妙な風土病が流行り始めた。時には死に至るその病を嫌って若者は村を離れていき、現在は高齢化が進んだ過疎地になっている。
エスパダ教会のアリリオ司祭は、教会内で何者かが語りかけてくる "声" を聞く。その数日後、教会に11人の男女がやってきた。高齢の者から、村を去って行った若者まで様々で、みな「主のお告げを聞いて」やってきたのだという。
総勢12人が聖剣の前で祈りを捧げたとき、彼らに "声" が聞こえてきた。それはスペインとアンドラ公国との国境で山火事が起こるというものだった。
ちなみにアンドラ公国とは、ピレネー山脈の麓にあってスペインとフランスの間に挟まれた小国だ。
その数日後、本当にピレネー山脈で大規模な山火事が発生した。さらに聖剣の "預言" は続き、ことごとく的中していく。SNSを通じて注目も集まり、ついにアリリオ司祭はバチカンへ奇跡認定の申請を行うことになった。
バチカンは平賀とロベルト、さらに元スパイという経歴のアルバーノ神父を加えた3人に現地調査の命令を下した。
その結果、不思議なことが判明する。"預言" は12人以外の者には聞こえてこないこと、聞いた者の中には、脳腫瘍などの難病が治癒してしまった者がいること、そして ”聖剣の奇蹟” が始まって以来、原因不明とされてきた村の風土病がすっかり治まってしまっていたこと・・・
毎度のことだが、作中で "奇跡" と見えるものも、最終的には自然現象のひとつだったり、人為的な原因があったりと合理的な説明がついてしまう、というのがお決まりのパターンだ。
「なるほど」と思わせる納得の説明から「いくらなんでもそれはないだろう」と苦笑いしてしまうものまでさまざま。作者も苦心してるんだなあと思う(笑)。
今回の ”奇蹟” も、平賀を中心に科学的な分析が続いていき、最終的には解明されていくのだが、どんな理屈付けがなされるのかな、というのが楽しみだ。
今回の風土病関連については「まあそうかな」と思えるのだが、"預言" が12人にしか聞こえない、というカラクリにはちょっと驚き。「そこまでやるか」とも思ったが不可能とも言い切れない気が。
難病治癒に関してはちょっと苦しいかな(笑)。でもこのへんは深く追求せずに読み流すのが正解かなとも思う(おいおい)。
一連の事態の裏には意外と大きな陰謀が潜んでいて、終盤40ページほどで一気にサスペンスが高まり、平賀とロベルトは巨大な危機に直面することになるのだが、このへんは読んでのお楽しみだろう。"奇跡" の認定についても、ラスト3ページで意外な展開が待っている。
このシリーズの長編は、だいたい年に一巻ずつ刊行されてるのだけど、安定して面白い。来年も期待します。
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