失恋の準備をお願いします



失恋の準備をお願いします (講談社タイガ)

失恋の準備をお願いします (講談社タイガ)



  • 作者: 浅倉秋成

  • 出版社/メーカー: 講談社

  • 発売日: 2020/12/15









評価:★★★☆





 男子から受けた告白をなんとか断ろうとあの手この手の嘘をつく女子高生、嘘発見器機能を内蔵した人形を持つ探偵気取りの男子高生、尋常でないくらい異様にモテる男子高生・・・ぶっ飛んだキャラたちが織りなす5つのコメディ。それらが相互に絡み合い、最終話では大騒ぎに・・・意外な伏線回収に驚く連作短編集。





「第一話 状況間近のウィッチクラフト」

 1ヶ月後に高校卒業を控えた千代子は。男友達の日野くんから告白を受ける。しかし千代子は東京の大学に、彼は地元の大学に進学する。

 遠距離恋愛に自信が持てない千代子は、「私は魔法使いだから」(おいおい)と嘘をついて断ろうとするが、日野くんは「たとえ魔法界を敵に回しても構わない」と、彼女の嘘を真っ向から受け止めてしまう。

 千代子はさらに嘘を重ねていき、どんどんドツボにはまっていくのだが・・・





「第二話 真偽不明のフラーテーション」

 高校3年生の "僕" は、孤高の天才科学者(笑)・漆原博士から、嘘発見器機能を内蔵した市松人形・"小百合" をもらう。

 かねてから名探偵に憧れていた "僕" は、"小百合" を持って学校へ行き、喧嘩をしているカップル・翔子と正をみつける。浮気をしたと翔子が疑うが、正はそれを否定していた。"僕" は "小百合" を使って真相を確かめようとするのだが・・・





「第三話 不可抗力のレディキラー」

 ヒロイン・梅子のクラスに転入してきた蕗太郎(ふきたろう)は、異様なまでに女性にモテる男だった。このモテ方がまた半端ない(ほとんどコントである)。そのため、蕗太郎はまともな人間関係が築けないという悩みがあった。しかしなぜか、梅子は蕗太郎に全く魅力を感じなかった。この梅子さん、なかなかの ”女傑” キャラである

 そんな梅子に蕗太郎は相談を持ちかける。「この "モテ病" をなんとか克服したい」と。梅子が漆原博士に相談したところ、ある発明品を手渡される・・・





「第四話 寡黙少女のオフェンスレポート」

 小学4年生の折尾くんのクラスで、盗難事件が起こる。体育の授業後にボールペンが盗まれていたのだ。体育の授業で最後に教室を出たのは芙蓉さんだったことから彼女に容疑を掛けられるが、折尾くんがかばったことでその場は収まる。

 しかし放課後、芙蓉さんから自分が犯人だったことを打ち明けられる。しかも、そのことを彼女は全く悪いことだと思っていなかったのだ・・・





「第五話 勤勉社員のアウトレイジ」

 外回りの営業中にサボっていたサラリーマン・藪田は、近くを通りかかった女子大生風の女性・奈々子を襲うが返り討ちにされてしまう(おやおや)。ブラック企業での労働に疲れていた藪田は、不祥事を起こせば会社を辞められると思ったのだった。

 事情を聞いた奈々子は、藪田に協力を申し出るのだが・・・





「第六話 失恋覚悟のラウンドアバウト」

 互いに独立していたと思われていた5つの物語の登場人物たちが挙って登場し、ドタバタな大騒ぎを繰り広げる。各話の隠された関係が明らかになり、ばら撒かれていた多数の伏線が絡み合い、意外な形で回収されていく。





 作者の前作『フラッガーの方程式』と同傾向の作品だが、今回は5つの物語を一つに組み上げていくというなかなかの力業を披露してくれる。

 ”伏線の名手” という異名は伊達ではないようだ。





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