評価:★★★
主人公はキャリア警察官・柿崎努。
警察大学校で初任幹部科教育を終え、現場経験を積むために山梨県警上吉田署という辺鄙な場所へ赴任した。
しかしそこは青木ヶ原樹海担当の部署だった。
職務はもっぱら、樹海で発見される死体の処理。しかし、自殺体がほとんどの中にあって、ときには不審な死体もある。
生真面目な柿崎が、栗柄(くりから)・桃園(ももぞの)という一癖も二癖もある部下たちとともに、樹海に潜む犯罪を暴いていく、ユーモア・ミステリーだ。
本書は三話構成。いちおう一話完結なのだけど、物語のバックボーンは共通していて、緩やかにつながったひとつの長編としても読める。
「第一話 柿崎努の冒険」
甲府市内で殺人事件が起こる。被害者は薬物の売人をしていたらしい。友人の三叉(みつまた)という男が容疑者として浮かぶ。
しかしその三叉の死体が、樹海内にある溶岩洞窟のひとつ、富士風穴の中で発見された。洞窟内で転んで頭を打った事故死と思われたのだが・・・
「第二話 柿崎努の推理」
福西、辻村、川北は大学の探検部の同期生だった。卒業後も毎年、青木ヶ原樹海の探検に繰り出してきた。しかしそれも10年目となり、それぞれの境遇も変化してきたこともあって、今回で打ち切りと決めていた。
夜になると福西と辻村は民宿に泊まり、川北は樹海内に張ったテントで過ごすのが常だったが、その朝、目を覚ました2人は辺り一面の雪景色に驚く。
テントの様子を見に行った2人は、喉をナイフで切られた川北の死体を発見する。そして現場の状況から、犯人の逃走は不可能と思われたのだが・・・
”樹海での不可能犯罪” という設定が面白い。いつも真相解明というオイシイ部分を栗柄と桃園に持っていかれてしまう柿崎君なのだが、今回は頑張って推理するのも楽しい。
「第三話 柿崎努の逃亡」
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