評価:★★★
死者を蘇らせる死霊術で発展した亀珈(かめのかみかざり)王国を舞台としたファンタジー、第3作。
各巻、一話完結になってるのだが、本巻については第1巻「忘却城」の直接の続編になってるので、本巻からいきなり読んでも分からないかな。いや、読んでても分からないかもしれないが(おいおい)。
第1巻の主役だった青年・儒艮(じゅごん)は、引き取った少年・金魚小僧(きんぎょこぞう)とともに暮らしていたが、私塾を開くために「比和院(ひわいん)」という屋敷を買い取った。
しかしそこは幽霊屋敷として知られており、引っ越し直後から数々の怪奇現象が起こって塾生たちは怯えることに。
そんなとき、王都に瀕死状態の炎龍(えんりゅう)が飛来する。それは王国では”神獣” と呼ばれる至高の存在だった。
その炎龍は卵を孕んでおり、次代の炎龍を産み落とそうとしていることが判明する。そして炎龍との意思疎通を図る必要が生じる。
しかし龍語を解することが出来るのは、蘇った死者と生きた人間の間に生まれた ”界人(さかいびと)” のみ。
そこで ”界人” の一人である儒艮が ”通訳” として指名されたのだが・・・
とまあ、メインのストーリーはこうなるのだけど、このシリーズの特徴として溢れんばかりのイメージの洪水というか、印象的なシーン、意味深な台詞が全編を埋め尽くしていて、なかなか全体像が見えにくい。
しかも物語は多重構造をなしていて、かつてこの地を支配していた千形族の王や死霊術士の魂の蘇りや、王国を支配する黄王(おうおう)家における家族内の葛藤、わけても正王妃・雪晶(せっしょう)を巡る過去の秘密、そしてダブル主演である金魚小僧が自分のルーツを探る物語もあり、終盤には「比和院」の過去までも絡んでくる。そしてこれらが渾然一体をなしていて、読み解くのは容易ではない。
複雑な物語はジグゾーパズルなどに例えられることもある。本書でもピースは無数に与えられるのだけど、並べることをより困難にしているのは、物語の進行とともにピースの形が変わっていってしまう(ように見える)ことだ。
大丈夫な人もいるかもしれないが、私のアタマでは処理不能だなぁ。
例えば金魚小僧の ”正体” だって、”これだ” と思って読んでいたら、後の方ではなんだか違っているみたいに書いてあるし。一事が万事この調子で、いったい何をよりどころにすればいいのか、読んでいて悩むことばかり。
とまあいろいろ書いてきたけど、ラストまで読み終わってみると、いろんなことがそれなりにいい案配のところに、落ち着くべきところに落ち着いていって、「まぁいいか」って思わせる(笑)。
この雰囲気がこの作者さん本来の持ち味なのか、それともこのシリーズのためにあえてこういう書き方をしているのかは分からないけど、こういう作風が続くと、正直言って読み続けるのはしんどいなぁ・・・って思ってしまう。
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