舞台は50年ほど前のフランス。
ゴラーズ家はパリ郊外の村ラボリに居を構える、地主にして資産家だ。
1967年、ゴラーズ家の当主が帰郷するところから本編は始まる。
交通事故で家族を喪い、自身もまた重傷を負った当主だったが
パリで治療に当たってくれた若きセラピストと結婚することになった。
当主夫妻のラボリ村での新しい生活が始まる。
都会から田舎へ嫁いできた新妻も、村社会の中に迎えられるのだが・・・
築300年というゴラーズ邸には、建物を貫くように螺旋階段が設置され、
地下室には第二次大戦中に村で虐殺された人々の亡骸が眠っているが
地下へ向かう階段は施錠した扉によって厳重に封印されていた。
物語は章ごとに夫妻が交互に語り手となって進行する。
序盤は新婚生活が綴られるのだが、次第に不穏な要素が増えていく。
ラボリ村では10代の少年たちが次々と姿を消すという事件が起こり、
夫の語りの部分では、彼自身と事件との関わりも明かされる。
一方、妻もまた ”秘密” を抱えていた。
彼女が結婚したのは、”あること” を探り出すためだったのだ・・・
かつて村で行われた虐殺事件、死者を封じた屋敷の地下室、
謎めいた使用人たち、そして現代に起こる連続失踪事件、と
横溝正史ほどではないが、ヨーロッパ版 ”田舎の旧家” といった赴き。
とはいっても、これらは本書の要素としては小さい部分で
メインとなる ”キモ” の部分には、大ネタが仕込んである。
これ以上は何を書いてもネタバレになりそうなので
「読んでください」としか言えないが
巻末の解説では、本書は「本格ミステリ大賞の候補作になった」とある。
これも納得の出来である。
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