鬼畜の家




鬼畜の家 榊原シリーズ (講談社文庫)

鬼畜の家 榊原シリーズ (講談社文庫)



  • 作者: 深木章子

  • 出版社/メーカー: 講談社

  • 発売日: 2014/05/09

  • メディア: 文庫





評価:★★★★



物語は、元刑事で私立探偵をしている榊原が

北川郁江という女性、およびその子どもたちの行動を追って

彼女たちと関わった人から話を聞いていく、という形で進んでいく。



彼がまず訪ねたのは、木島病院の院長である木島敦司。



開業医だった北川秀彦は、両親の猛反対を押し切って

准看護婦だった郁江と結婚した。

やがて長男・秀一郎、長女・亜矢名(あやな)、次女・由紀名と

3人の子をもうけるが、秀彦が投機に手を出して失敗、

医院の経営状態は悪化していった。



そんなとき、秀彦の友人だった木島敦司は

郁江から呼び出しを受け、北川医院へと向かう。

彼がそこで見たものは、秀彦の死体だった。



自分で毒物を注射した自殺と思われたが

郁江の「自殺では保険金が下りない。家族が路頭に迷う」

という言葉に、木島は ”病死” の診断書を書いてしまう。



その結果、郁江は莫大な保険金を手にすることになったが・・・




木島に続き、主婦、刑事、事務員、学生、保険外交員など

さまざまな立場から郁江に関わった者を榊原は訪ねていくが

そこで浮き彫りになってくるのは、彼女の驚くべき行動の数々。



郁江の行く先々ではさまざまな事件/事故が起こっていく。

場合によっては人の命が失われることも。

しかし事が終わってみると、郁江のもとには

多額の財産が転がり込む、という結果に。



そしてその対象は他人に限らない。

長女の亜矢名が、住んでいたマンションのベランダから

転落死してしまうが、郁江は施設の不備を理由に

マンションのオーナーから莫大な賠償金をせしめることに成功する。

実子の死でさえも、金銭に置き換えていってしまうという凄まじさ。



しかし郁江は突如、長男・秀一郎と共に失踪してしまう。

二人が乗っていた車が海に沈んでいるところが見つかるが

どちらの遺体も発見されないまま。

郁江が秀一郎を溺愛していたことから

無理心中を図ったのではないかと思われたのだが

唯一生き残った次女・由紀名が驚愕の事実を語り出す・・・




本書は、「第3回 ばらのまち福山ミステリー文学新人賞」の受賞作。

これは島田荘司が立ち上げて、審査員は島田荘司が一人で行うという、

ある意味スゴいミステリー新人賞なのだけど、

驚くべきは作者・深木章子の受賞時の年齢だ。



60歳まで弁護士としてはたらき、リタイアしてから執筆活動を開始、

2010年に本書でデビューするのだけど、このとき63歳。

しかも、デビュー後の10年間で12冊くらい刊行している。

いやはやスゴい。このペースでいったら90歳までに30冊以上書きそう。



 皆川博子さんみたいに、80歳を超えても

 第一線で活躍している人もいるし、日本の高齢者はホントに元気だ。



内容についても、さすがは島田荘司が選んだ作品と言うべきか、

よくできたミステリになっている。たいしたものです。


この記事へのコメント

  • mojo

    鉄腕原子さん、こんばんは。
    nice! ありがとうございます。
    2021年05月27日 10:20
  • mojo

    @ミックさん、こんばんは。
    nice! ありがとうございます。
    2021年05月27日 10:20
  • mojo

    サイトーさん、こんばんは。
    nice! ありがとうございます。
    2021年05月27日 10:20
  • mojo

    31さん、こんばんは。
    nice! ありがとうございます。
    2021年05月27日 10:21